「――その前に、リストのことを答えてもらおうか、我が友よ」
屋敷内の1室にて、牢屋から脱出したユーグとギィの微妙な駆け引きを繰り広げていた。
「リスト? 一体、何の話だ、それは?」 「……本当に知らないのか? ……それならいい」
一瞬、“教授”の方を睨みつきえたが、すぐに視線をユーグに戻した。
「ええっと、君の質問は何だったかな? ああ、あのシスターのことだったね。彼女なら、とっくの昔に殺したよ。 「―――ギィイイイイイイイイイッ!」
ギィの発言に対して反撃するかのように、ユーグが細剣を構え、床を蹴って一直線にギィに向かって疾走する。
「“ドクター”、“ブリーチャー”、その男を始末しろ。これ以上生かしておくのはいい加減、飽きた。今度は <かしこまりました>
ギィがうんざりしながら言うと、彼に言われた賞金稼ぎの2人が、ユーグに目掛けて攻撃を始めた。
傷だらけになった体で、必死になって相手の攻撃を避けていくユーグだが、
<終わったな!>
ユーグが膝を突いた瞬間、“ブリーチャー”が大剣を掲げ、彼の首に刀を振り下ろそうとした。
「な、何をするのだ、ランシェ!?」
“ブリーチャー”の大鎌が振り落ちようとしたのと同時に、大鎌と一緒に腕を切断され、
「貴様、一体どういうつもりだ!? 答えろ、ランシェ!」 「はて? どういうつもりかと言われても困るな……。僕はただ、任務を果たしているだけでねえ。……ああ、
“教授”肌色のテープで喉に貼り付けた変声期を取り去り、特殊高分子素材製のマスクを剥ぎ取と、
「マ、師匠……、ワーズワース博士! あ、あなたがどうして!?」 「ほう、まだ僕の顔を覚えてくれていたとは嬉しいねえ……。とは言いたいところだがね、ユーグ。君、いつまで 「馬鹿な……、ランシェじゃない!?」
ギィは混乱したように言うと、突然、どこからか銃弾らしきものが、彼に向かって飛んで来た。
「本物のランシェ議員なら、ブリュッセルの検察局で取調べ中よ、ブリュージュ伯」
声が聞こえる方に振り向くと、少し映像が乱れたように見え、次第にそこから、
「当分、出て来られないと思うわよ。第一、私達が贈収賄の証拠を見つけ出して、同盟政府に直接持ち込んだの 「! シスター・・! 君まで、どうして!?」 「久し振りね、ユーグ。そこまで傷だらけになりながら、よく無事でいられたわね。奇跡に近いわよ」
がユーグにウィンクしながら言うと、無事を確認して、ほっとしたように彼に微笑みかけた。
「……待て!? お前が偽物ということは……、まさか、あの秘書も!?」 「はい、その通りです」
ギィの背後から、議員秘書をしていたヴァーツラフが現れると、手にはしっかり、例のリストが握られていた。
「し、しまった、リ、リストを!」 「……何分、昨日から館内はいろいろ調べたのですが、このリストだけは見つけることが出来ませんでした。 「く、くそっ、やってくれたな、教皇庁! こちらの挑発に乗ったふりをして、こんな手の込んだ真似を! いや、
足下が崩れるような状況になりながら、ギィは声を嗄らすように叫ぶ。
「いや、別に君達が吸血鬼だから特にはりきったわけではないよ。僕個人に関して言わせて貰えば、ただ単に君の 「それと、ユーグのこともあるんでしょ、“教授”の場合は」 「然り」
としても、いろいろ理由がある。それもそのはず。
このままユーグを放っておくことなんて出来ない。ましてや、剥奪までした理由がどこかにあるのではないかと。
執務室のソファに座っているを見ながら、カテリーナはため息を1つつき、紅茶を一口飲んだ。
「カテリーナ、これは仕事馬鹿とか、そういう問題じゃないの。ただこのままユーグを放置したままじゃ、 「それは、相手が元同僚だったからですか?」 「『元』なんかじゃない。今でも私は、彼を同僚だと思っているわ。いくらあなたが剥奪しても、その気持ちだけは
の目が、カテリーナに鋭く向かれている。
「……成長したのね、」 「え?」 「昔だったら、他人のことはそんなに感心を持たなかったはずなのに、今ではこんなに相手のことを考えてる。 「今でも、他人のことなんてどうでもいいわ。でも、それとこれとは、話が別よ」 「そうですか? 私にはそう見えないけど」 「……何が言いたいの、カテリーナ?」 「いいえ、何も。ただ思ったことを言っただけよ」
ここ13年、彼女とつき合っていても、なかなか相手の心境を把握することが出来ない。
「……いいでしょう。ユーグ・ド・ヴァトーの現状を調べて、私に提示しなさい。資料がまとまり次第、すぐに動く 「……本当に、やっていいのね?」 「私が嘘をついたことがありますか、?」 「……いいえ。逆に、予想以上のことをしてくるのがあなただものね」 「その通り。資料次第で、私が指示を出すかどうするか決めます。ちゃんと用意してきなさい」 「……了解」
は紅茶をすべて飲み乾すと、その場に立ち上がり、すぐに執務室を出て行った。
いなくなったソファを見つめた後、カテリーナはその場に立ち上がり、窓際へと向かい、窓に寄りかかった。
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が他人のために、あまり動く人じゃないんですが、
今回は彼女自身が納得いかなかったのでしょう。
そうじゃなかったら、自分で提案などしないと思いますからね。
どこが他人に無関心なんだか(汗)。
アベルがいたら、絶対に突っ込んでいたに違いありません。
目に見えて想像がつくわ(汗)。
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