「く、くそっ……、“ドクター”! “ブリーチャー”! こいつらを殺せ! 金なら弾んでやる。……私が氏族を
呼んでくるまで、時間を稼げ!」




 ギィがヒステリックに賞金稼ぎに命令して、手前の扉を蹴り開け、そのまま部屋を出て行った。
 達3人のうちの誰かが行ってもいいのだが、今は彼ら3人よりも適任している人物が、ここにいる。




「ユーグ、何をしている! 早く、彼を追いたまえ!」

「し、しかし、師匠、私は……、私はあなた方を、その、捨てて……」

「捨てることなんて、出来ないはずよ、ユーグ」




 が“教授”を援護するように、短機関銃装備(マシンガンモード)で相手に立ち向かうと、ユーグに説得するかのように言う。




「私達は誰も、あなたを捨てようとも思わないし、捨てられたとも思っていない。そんなこと出来る人じゃないって、
分かっているからよ」

の言う通りです、ヴァトー神父。私達だけではない。神父トレスやケイト、アベル達もです。……人は家族から
離れることは出来ても、真の意味で捨てることは出来ませんから」

……、ハヴェル神父……」

「ユーグ、言い訳なら、あとでたっぷりと聞こう。――今は、君の過去を清算してきたまえ。そして、すっきりした
気分でローマに帰ったら……、僕のラボの大掃除だ。分かっているね」

「何か、余計な部品とか、いっぱい落ちてそうね」

「そりゃそうだ。掃除役がいなくなって、こっちは困っているのだから。もちろん、君にも手伝ってもらうから、
そのつもりで」

「丁重にお断りするわ」




 “ブリーチャー”の攻撃を避けながらも、は“教授”の言葉に、少々呆れながら答えた。
 確かに、彼のラボでいくつか装置を作ったりしていた時もあったのだから、
 彼がそういう気持ちも分かるまでもないが。



 ユーグは“教授”に何か言葉を返そうとしたが、結局見つからず、無言のまま一礼して、
 ギィが消えた扉に飛び込み、窓ガラスの音と共に去っていった。
 その音を聞きながら、少々呆れたように“教授”が言う。




「全く、手のかかる子だ……。悪いね、ヴァーツラフ、君。あんな馬鹿弟子に付き合わせてしまって」

「正確に言えば、私が付き合わせてるようなものだから、お互い様よ」

「私もミラノ公の謀略には、少々、あまり感心は出来ませんでしたけど、あなた方の心配そうな姿を見るのは結構
新鮮で楽しめましたよ」

「楽しめたなんて、結構失礼なこと言うのね、ヴァーツラフ」

君はそうかもしれないが、僕は別に心配なんてしてないと言っているじゃないか。君も意外としつこいね」




 会話をしつつも、3人は3様に攻撃をしていく。
 が“ブリーチャー”の攻撃を避けつつ、銃で攻撃を繰り返していき、“教授”が細刀で相手に切りかかる。
 一方のヴァーツラフも、“ドクター”の電撃棒の攻撃を避けつつ、得意の体術で相手に迫る。




君、これを使いたまえ!」




 しばらく戦うと、“教授”が自分の持っていた細刀をに託し、彼は一歩下がった。
 一体、どういう意味だろうか?




「ウィル、まさか私に……!?」

「相手も大鎌なんだから、その方が都合いいだろう?」

「出来ることなら、『あれ』を使う時だけにしたかったんだけど……」

「今はそんなことを言っている場合ではありません。あなたの気持ちも分かりますが、ウィリアムの言う通り、
その方が早いかもしません」

「……仕方ない、そうしますか」




 半分諦めたかのようにため息を着くと、銃をしまい、細刀をしっかりと持ち直し、相手に攻撃を繰り出した。
 その姿は、以前にも刀を扱ったことがあるように、スムーズに進んでいく。



 の刀さばきに、相手はどんどん押されていき、ついに隙を作ってしまう。
 それを待っていたかのように、は大きく刀を振り被り、一気に切りつけた。




<ぎゃああああああっ!!>




 “ブリーチャー”の声が、高々と部屋に響き渡る。
 しかしそれが途切れる前に、は留めを指すかのように、再び横に切りつけ、相手の動きを完璧に封じ、
 横に倒れていった。



 相手が戦闘不能になったのを確認すると、は刀についた鮮血を落とすように振り払い、
 ちょうど“ドクター”を倒したヴァーツラフに、それを手で合図を送った。




「お疲れ様、ヴァーツラフ。大丈夫だった?」

「ええ。も、無事そうですね。よかった」

「ウィルもこれ、ありがと。確かに、こっちの方が早かったわ」

「そうでだろう? 僕の予想は的中だった、というわけだ。ところで、ヴァーツラフ。君の次の任務はプラーグで例
の兵器の盗難事件の調査だったね? プラーグ行きの最終列車は11時だから、ちょうど間に合うね」

「はい。本当、間に合ってよかったです」

「送っていく?」

「いいえ、大丈夫ですよ、。それに、あなたにはまだ仕事が残っていますし」

「……それもそうね」




 はヴァーツラフに笑顔で答えると、彼もに優しく微笑み、その場から去っていた。
 その姿は、まさに何かを物語っているようにも見受けられた。






 この時、ヴァーツラフが何を感じていたのか。

 と“教授”には、それを読み取ることが出来なかった。

















剣、特に細身の剣の方が得意なですが、あまり好んで使うことはありません。
今現在(ROM)でも、持ち歩いてはいるけど、使ってませんしね。
あ、でもROM6になったら使うかな?

そしてこの時に、もしヴァーツラフの事情が分かっていたら止めることが出来たのかと、
ちょっと思ってみたりもします。
そうすれば、この後起こる事件に発展することなどなかったはずですしね。





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