相手がどう出るか分からない。もしかしたら、自分が所有している銃じゃ力不足かもしれない。
「……卿はそこで何をしている、シスター・」
ある程度の銃弾の試し撃ちが終わった時、後ろから声が聞こえて振り返る。
「新しく調合した弾丸の試し撃ちをしていたのよ。もしかしたら、今度の作戦で使えるのがあるかもしれないって
ガード用のゴーグルを外し、2挺の銃の弾倉に弾丸を詰め始める。
「……何だか、不満そうね」 「肯定。俺はまだ、卿に従おうとは思っていない」 「別にそれでも構わないけど、あなたがピンチになっても、助けないわよ」 「卿の助けは無用だ」 「相変わらす、素直じゃないわね、あなたは」
トレスは3日前のことにまだ納得がいかないようで、あれからとあまり話していない。
「……ま、あなたが指示に従う従わないはさておき……」
全ての弾丸をしまい終え、それぞれの銃に装着させる。
「あなたがヴァーツラフを許さない気持ちは分かる。それは私だって同じだし、未だに信じられない気持ちでいっぱい
足を進め、トレスの前まで行くと、彼女は何も考えず、相手の手を取った。
「あなたがこの手でヴァーツラフを殺そうが殺すまいが、それはあなた自身で決めればいいこと。でも、これだけは
トレスの手を両手で強く握り締め、相手に訴えかけるような目で見つめる。
「例えどんな形になろうとも、私達は彼を止めなくてはいけない。私達にしか、彼を止めることが出来ない。私達だ
彼女の目は、いつも以上に鋭く、相手の顔を真剣に見つめていた。
「卿の発言意図は不明だ、シスター・。俺はミラノ公以外の人物からの命令は聞かない。だが……」
握っていた手を外し、に背を向け、歩を進める。
「……だが、今現在の俺の最優先命令は、ブルノにいる聖下の救出と噴進爆弾の回収だ。そしてその指揮を、ミラノ公
トレスはそれだけ言い残し、再び足を運び始めた。
「新しく開発した武器だよ。試しに、君に使ってもらおうと思ってね」
準備段階を報告しに“教授”のラボに行くと、紅茶と一緒に、長さ30センチほどの棒状のものを手渡された。
「ウィル、これは何?」 「それは、押してみれば分かるよ。……おおっと、出来れば、その場に立って、ボタン部分を下にして押してごらん」
頭の中で「?」を浮かべたまま、とりあえず言う通りにその場に立ち上がり、ボタン部分を下にして押してみた。
「……あのね、ウィル。私は……」 「前回のブリュージュの件で、僕は君の力を押さえておくのが勿体ないと思った。で、どうにかして、表に出して 「あの時も言ったけど、私が使うのは、『あれ』になった時だけよ。それ以外は……」 「それじゃ、使うたびに、『あれ』になるというのかい? そんな面倒なこと、するもんじゃないよ」
確かに、“教授”の意見には一理あった。
しかし……、ものは試しに、やってみてもいいかもしれない。
「……分かったわ。持っていくだけ、持っていって、使うかどうかは、現地で決めてもいいでしょ?」 「勿論だとも」
はボダンを押して元に戻すと、
「……今日はカフェに行ってないのかい?」 「行ったわよ。ちょうど、レオンと物色したついでだったから、彼も一緒にいたけど」 「なるほど。……本当、最初から知っていたのだね、ヴァーツラフのこと」
“教授”の言葉に、は急に思い出し、その場に俯いてしまう。
「あ、すまない、君。別に僕は、そんなつもりで言ったのでは……」 「いいのよ、ウィル。……ありがとう」
再び顔を上げ、焦った顔をしている“教授”を見つめる。
「私は、もう大丈夫。あとは……、天に任せるだけよ」 の顔には、もう不安の色は見えていなかった。
「ヴァーツラフには、いろいろお礼、言わなきゃいけないもの。昔から、彼にはお世話になりっぱなしだから。 「僕は別に、何もしていないつもりだが?」 「でも、あなたがいなかったら……、私はあれを――“タクティクス”を作ろうとは思わなかった」
すべてのきっかけは、“教授”が与えたもの。
「ええ、もちろん。レオンとも確認取れたしね」 「そうか。……君」 「ん?」 「今度、私の次回作の手伝いをしてくれないかね? 何、変な機械を作るんじゃない。今後、Axに必要な、大事な 「大事な、もの?」 「然り。今はまだ言えないが、決まり次第、早急に君に頼むことになるかもしれない。やってくれないかね?」
「Axにとって必要な大切な物」。
「分かったわ。でも今は……」 「任務に集中したい、だね?」 「ええ。ウィルにはここに残って、メディチ猊下の監視、というか、異端審問局の様子を、ほんのささえなことでも 「分かったよ、君。僕も、出来る限りのことをやってみるさ」 「お願いね、ウィル」
が“教授”に優しく微笑むと、彼は少し驚き、でも安心したかのように自分の紅茶を一口飲んだ。
「え? 今、何か言った?」 「いや、何でも。ほら、君。しっかりこれを飲んで、乗り切りたまえ!」 「ええ、勿論!」
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とトレスの会話を読み直して思ったのですが、
この時のは、彼に向って本当に訴えていたのか、それとも演技していたのか、
ちょっとした疑問が横切りました。
どっちだったんでしょう。
私としては本心であって欲しいんですけどね。
“教授”との付き合いは、実はカテリーナよりも長かったりします。
その謎はROM5になって明らかにされます。
その前に、彼が言う「次回作」の謎はRAM6にて。
本当にこんなんばっかだよ(汗)。
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