「……やっぱり、ここにいましたか、さん」
どこからか声が聞こえ、ははっとしてその方を見ると、
「ケープなしじゃ、いくら10月だからといっても、風邪引きますよ」
優しく彼女の肩にかけると、彼女を後ろからそっと包み込む。
「……あそこは、変わってないのかしら?」 「たぶん、変わってないでしょうね。あれから、一度も戻ってないから分かりませんが」
「戻りたいとか、思ったことある?」 「いいえ。むしろ今は、ここにいなきゃいけないと思っていますから」 「確かに……、それは言えているわね」
今の自分達は、「あそこ」に戻るべきではない。
「……今でも、時々夢に出てくるの。昔、3人で、テーブルを囲んでいた時のこと。覚えてる、アベル? あなた、 「ええ。あの時は、何もかも信じられなかった時でしたからね。今思えば……、後悔にしかならないのですが」
頭をの左肩に置く姿は、まるで必死になって、今の自分の表情を隠しているように見え、
「……駄目よ、アベル。思いつめれば思いつめるほど、自分を苦しくするだけよ」 「分かっています。けど、こうすることでしか、自分を支えられなくて」 「そんな支え方じゃ、この先、持たないわよ」
呆れたように言うの声に、アベルが苦笑したような気がした。
「……ヴァーツラフの言いたいこと、何となくだけど分かっていた。半分、私が言いたかったこととだぶっていた
3日前のことを思い出し、はそっと話し始める。
「でも、カテリーナがそうしなきゃいけなかったことも分かっていたし、誰よりも辛いのが彼女なのも知っている。
カテリーナがアレッサンドロを教皇にしなくてはいけない理由はただ1つ。
「それにほら、彼女、頑固でしょ? 私も結構頑固な方だと思ったけど、彼女まで酷くないわ」 「確かに、そうですね」
が呆れたように言うと、アベルが微かに笑い、それが気に食わなかったのか、彼女は彼に少し反撃する。
「あ、今、笑ったわね?」 「いいえ、笑ってなんていませんよ」 「嘘。確かに笑ったわ」 「さんの見間違いですよ」 「……ま、いいわ。とりあえず、そういうことにしといてあげる」
これじゃ、埒があかない。
「……アベル」 「はい?」 「きっとあなたは、彼を説得させる方法を考えているかもしれない。けど私は、説得だけじゃ、彼を納得させるのは
訴えかけるように言う声は、アベルにどう届いているのか分からない。
「だから私は、彼に銃を向けることにした。でも、トレスみたいに排除したりはしない。あくまでも、彼をこちらに
「……さんの言いたいことは、前から十分理解しています」
話し終えたの後ろで、アベルが静かに、彼女に声を賭ける。
「あなたはいつも、そうやって道を正して来た人ですからね。勿論、そのことには賛成します。しかし……」
彼女に訴えかけるように、抱きしめている腕を強くする。
「……しかし、やはり私には、彼に銃を向けることは出来ません。だから、ヴァーツラフさんを説得する方向で進め 「……そうだと思ったわ、アベル。いいわよ。好きにしなさい。でも……、無理、しないように」 「はい」
は相手の意見を聞き入れると、強く抱きしめていた腕を少し緩め、相手に向かい合う。
そっと頬に触れ、相手の額に自分の額を重ね、ゆっくりと目を閉じる。アベルも彼女に合わせ、ゆっくりと目を閉じた。
「実はね……、少し、不安なの。もしヴァーツラフが戻らなくて、このまま自分の手が届かないところに行ってしま 「その気持ち、分かってます。でも、もしそうなったとしても、私やカテリーナさんはあなたを責めません。あ、 「……本当?」 「ええ。……約束します」 「……ありがとう、アベル。本当に……、ありがとう」 「当然ですよ。だって私は……、あなたの“クルースニク”ですから」
目を開くと、目の前にいるアベルが優しく微笑み、を安心させようとする。
お互いの視界が近づき、再び目を閉じる。
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最終的にはそこか、と思った方、
本当に申し訳ないです(大滝汗)!!!
いや、メインがアベル夢ですので、この辺は多めに見てやって下さい(開き直り)。
は慰めることの方が多いのですが、アベルに関しては慰められる方が多いかもしれません。
普段ヘナヘナしているけど、こういう時にしっかりとしているアベルが好きだから、というのもあるんですけどね。
かっこいい時にはかっこいい。
だからこそ、私もも好きなのかもしれません。
え、は考えが違うの? ま、それも少しずつ明解にしていきましょう。
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