翌日、ブルノに向かうメンバーは、ローマの国際空港にある“タクティクス”に乗り込み、出発準備をしていた。
この“タクティクス”の製造に基づき、はいくつもの国際空港に援助要請をしていたため、
「出発予定は、午後3:00で大丈夫ですね?」 「ええ。その時間だけ、他の便の離陸時間を遅らせ、神父レオンの操縦で離陸させます」 「了解しました。直ちに部下へ指示を出します」
ローマ国際空港チーフ、モーフィス・ライマンは、5年ぶりに再会したの要望に真っ先に答え、
「ところで、着陸位置はどうするおつもりですか? ブルノ付近には、国際空港は存在しません。一番近いところで 「ブルノ市内に、昔、空港として使われていた場所が存在しています。今はもう木で生い茂ってしまっているのです 「その場所なら、私にでも分かります。しかし、例の新教皇庁とやらの者達は、そこにも拝眉されているのではあり 「それが、あそこは元から、すべてがプログラムによって管理されているところでして、今でも不審者の監視を『彼 「つまり、そのプログラムを変更させれば、無事に着陸出来るとお考えなのですね?」 「正解。さすがですね、モーフィス。私のやりたいことが分かる人物なんて、そう多くいないのに」 「昔、同じ手順でやられた身ですからね。だいたい予測は出来ますよ」
の手にかかれば、例え有能のプログラムを搭載している国際空港でも敵うものはいない。
「……そろそろ、離陸準備に入らないわね。離陸データは、離陸後、すぐに抹消するようにプログラムしてあります 「分かっています。それもすでに、経験済みですから」 「そうでしたね。……それでは、あとは頼みます」 「お任せください、シスター・。どうぞ、ご無事で」 「ええ、勿論。戻る時に、またお願いします、モーフィス」
はモーフィスに一礼すると、彼に背を向け、目の前にある“タクティクス”に向かって歩き出した。
船内に入ると、レオンがコックピットで最終確認をしており、その後にある待機室で、
「さん、あの時よりも豪華になっているのは気のせいでしょうか?」 「ああ、それはね、毎年改造して、そこまでしたのよ。なかなかでしょ?」 「ええ。特にこのソファなんて、居心地いいですよ。何だか、寝ちゃいそうになります」 「任務中の居眠りは不謹慎行為だ、ナイトロード神父。もし寝た場合、俺はいかなる手段を使ってでも卿を起こす」 「まあまあ、いいじゃない。現地に着けば、のんびりすることだって出来ないのだから」
トレスの発言に、少し冷や汗をかきながらが止めたが、相手は特に気にもせず、再び弾倉の確認をし始めた。
「さて、そろそろ離陸時間だわ。レオン、準備は出来た?」 「こっちはいつでも行けるぜ。……それよりよ、。お前、あのデカイの、持って行く気か?」 「小型電脳情報機だと、ちょっと苦しくてね。今回は本体も持参よ」
先ほど、
「ま、それは後々伝えることにして……、レオン、離陸態勢に入って」 「りょーかい」
の指示に従うように、レオンがエンジンプログラムを起動させ、ゆっくりと機体を動かし始めた。
滑走路は予定通りに開けられ、滑走路内にあるコントロール・ルームから、
レオンがモーフィスに了解を取るように手を上げると、滑走路の出発点から一気にスピードを上げた。
地面が遠のくことで、無事に離陸が成功したのを確認した時には、すでに機体は安定状態に入っていた。
「あれ? どこに行くんですか、トレス君?」 「地上の状況を確認する。甲板に出る許可を、シスター・」 「いいわよ、トレス。何か見つけたら、すぐに伝えて」 「了解した」
の許可を得たトレスが甲板に向かったあと、は電脳情報機のキーボードを動かし、
「スクルー、例の反乱について、何か分かった?」 『新教皇庁に手を染めた聖職者が、教皇庁からの離反を周辺教会に呼びかけていることもあり、ブルノ市内に無数の 「となると、中には少なからず、元教皇庁職員もいるわけですから、進入はかなり楽になりますね」 「ええ。この分だと、予定通り今日偵察して、明日にでも実行出来そうね。レオン、例のは準備出来ているわね?」 「そっちの方はバッチリだ。問題ねえよ」
コックピットにいるレオンが、正面を向いたままに手で合図すると、彼女は安心したように微笑んだ。
「それにしても、5年前よりも随分と安定していますね」 「あ、そっか。アベルは出来上がった頃に試乗しているんだったわね」 「ええ。あの時もそれなりに安定していましたけど、ここまでしっかりとはしていなかったはずです」 「の改造マニアぶりが発揮されてんだよ」 「あなたと一緒にして欲しくないわね、レオン」 「現にそうなくせに、否定するんじゃねえよ」
確かに、言っていることは当たっている。
「この様子だと、2時間もしないで到着しそうね」 「ああ。思った以上に操縦しやすいし、こいつはいい船だよ。俺が欲しいぐらいだぜ」 「あなたが無事に刑期が終わったら、差し上げてもいいわよ。ずっとあの倉庫にいるより、操縦してくれる人がいる 「そんじゃ、ファナの手土産に持って帰るか!」
レオンが嬉しそうに言うのを見て、は呆れたようにため息をついたが、彼の嬉しそうな顔を想像して、
彼女の心の声は、本人に届くことなく消え去っていったのだった。
離陸する30分前から、は電脳情報機で、ブルノ空港内のプログラムを複写し、
「あと、どれぐらいの時間がかかる、シスター・?」 「もうじき終わるわ。……よし、これでバッチリだわ」
打ち込んだプログラムの最終確認をすると、はリターンキーを押して、ブルノ空港に転送させた。
「レオン、許可が下りたわ。すぐに着陸態勢に入って」 「おう」
すぐに操縦者に伝えると、“タクティクス”がゆっくりと減速し、地上に降りていく。
町並みがはっきりと見え始め、機体がゆっくりと滑走路に向かう。
レオンがブレーキをかけて揺れを止めると、“タクティクス”を木が一番生い茂っているところに停止させた。
「うし、無事着陸成功だ。がんばったな、“タクティクス”」
操縦席のエンジンを切って、お礼を言うように叩くレオンを見て、相当彼のお気に召したことを喜ぶように、
「さて、早速偵察しに行きましょう。作戦は予定通り明日決行。もし失敗しても、アルフォンソの戴冠式までには 「了解した」
がシートベルトを外しながら、他の派遣執行官達に伝えると、その場から立ち上がり、
太陽の光が一斉に入り、一瞬目を顰めてしまう。
知らない間に、彼らはそう、心の中で思っていたのだった。
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の古くからの知り合い、モーフィス登場です。
彼はRAM6にも書くのですが、父がアルビオン人なので、紳士さんです。
にとっては、そんな彼に親しみを感じているので、話しやすい相手です。
いいですね、紳士。“教授”もだけど(笑)。
と、いうことで、オリジナル部分はこれで全て終了です。
次回から本編に戻りますのでお楽しみに。
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