ある人物が、現れなければ。
教皇庁国聖省特務分室“フローリスト”、・は、
中庭にある特等席と言ってもいい指定のテーブル席で、
『わが主よ。汝は現在、休暇中の身。我のアクセスは認めない』 「習慣化しているのだから、仕方がないと思うけど?」 『現在では、最新情報は“アイアンメイデン”からでも入出可能だ』 「そんなことしたら、彼女に迷惑をかけることになるわ」
心配するのは「彼1人」だけではない。
今回の任務は、でなければ解決しないものだった。
追われていた人物はすぐに見つかった。
プログラム達が心配しているのは、
『汝が我の言うことを聞かないのであれば、我は失礼する』 「え、ちょっと待ちなさいよ。どうしてそういうことに……」 『ならば休むか?』
ここまで強く協調されてしまうと、もう何も言うことが出来なくなる。
『分かればいい。早く部屋で休むことだ、わが主よ。プログラム〔スクラクト〕、
プログラム「スクラクト」が回線を切断すると、は呆れたような顔をする。
呆れながらも電脳情報機の電源を切ろうとした時、
「あれ、トレス? これからお出かけ?」 「ミラノ公から、緊急出動の命令が下った。これから出動する。卿はそこで何をしている、 「私はゆっくり、満月を見ながらティータイムよ」 「否定。卿の前にあるのは、電脳情報機。よって卿が今、プログラム『スクラクト』 「でも、今、止められたわ。『休暇中は休め』だって。プログラムのくせに、生意気なのよ、こいつは。 「卿は今、休暇中の身。俺の仕事に肝油することは認めない」
機械は、どれもこんなものなのか。
「俺はすぐに、“アイアンメイデン”と合流する。卿は大人しく、部屋で休むことを推奨する」 「分かったわよ、トレス。気をつけてね」
は笑顔でトレスを見送ると、トレスはそのままスタスタと上司のところへ向かっていく。
そう言えば今頃、同僚である“クルースニク”アベル・ナイトロードは、
現在のトリスタン号の位置は、ちょうどロンディニウムとローマの中間点を飛行中だった。
「……仕方ない、やってみますか」
1つため息をついて、横に置いてあるミルクティを一口飲むと、
機内に設置してある管理カメラから、コックピットを映し出す。
「……これまた……、激しくやっちゃったのね……」
コックピット内は、機長や副機長などが、血まみれになって倒れている。
次に、通路を通して、アベルを探し始める。
「……こいつ、やりすぎ……」
あまりの血の気の多さに、思わず顔をしかめてしまい、別の場所に視点を移した。
「なるほど、こっから操縦しよう、ってことね。でも、誰が……?」 <シスター・、聞こえますか?>
ちょうどアベルの位置を確認したのと、イヤーカフスから声が聞こえたのはほぼ同時だった。
「聞こえてるわ、ケイト。どうしたの?」
<「どうしたの?」じゃありません! さっきから、トリスタン号のアクセスデータに、 「そう、起こらないでよ、ケイト。こっちだって、……って、トレスが言っていた緊急出動って、 <その様子だと……、知らないで調べてましたわね?>
ケイトの発言に、の背中に嫌な汗を感じていた。
<ま、今回のことは多めに見ておきますわ。その代わり> 「その代わり?」 <その代わり、今、さんが持っている情報を提供して下さいませ。こちらからも情報を提供します> 「分かったわ。ありがと、ケイト」 <いいえ、こちらも、相手がさんで安心したところですから>
プログラム「アクラクト」を使っていない今、自力で情報を集めることも可能だが、
は自分が持っている情報を、すべてに報告した。
<その女性が誰なのか、お分かりになりますか?> 「調べてみないと、何とも言えないわ。待って、今、フライトスタッフの名簿を調べてみるから」 <了解。こちらからも確認してみます。以上、通信終了>
一度、ケイトからの無線を切り、お互い、再び情報収集に入る。
フライト・アテンダントのほとんどが、すでにあの吸血鬼にやられている。
「……あった、彼女だ」
そんなことを考えている間に、目的のフライト・アテンダントのデータを発見した。
「……これが、彼女の娘、だったのね……」
何かを納得したように頷くと、イヤーカフスを再び弾く。
<……さん、ですね。今ちょうど、データを手に入れたところです> 「じゃ、タイミング的に、ちょうどよかったわけね。……えっ!!?」 <どうかしましたか、さん?> 「……せっかく、いい舵取りが見つかったと思ったのに、これじゃ、ダメじゃない!!」 <ちょ、ちょっと、あの、さん? どうかしましたの?> 「ケイト、フライト・アテンダントのジェシカ・ランク……、飛行船設計家のキャサリン・ <何ですって!?>
電脳情報機に映し出されている機内カメラからの映像を見て、は素早くケイトに報告した。
「音声コード、解除。ならび、複制御室の映像を拡大」
は手を動かしながら、独り言のように呟くと、電脳情報機が言う通りに動き、
『そ、それ……』 『電脳知性の強制対話暗号……ま、俺もよく知らねえんだけどよ。ただ、これをここに挿れて、 『だ、だめです……』
床にへばり付いているアベルが、必死になって相手の足を掴んだ。
「ケイト、聞こえているわね」 <はい、さん。ちゃんと声は届いています> 「今からこちらで、トリスタン号の操縦プログラムをダウンロードして、こちらでバックアップを取るわ。 <さん!?> 「ジェシカ・ランクが、鉄パイプで攻撃しようとしたら、それが抑えられ、逆にまた体が勢いよく壁に <そんな! だとしたら、操縦は誰が……!!>
ケイトとの通信の間に、はすぐに、トリスタン号の操縦プログラムをロードし、
「彼女が気づくまで、私がこっちで操縦するわ。ケイトはそのまま……、……ところで、 <ああ、そうでした。実は……>
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「FRIGHT NIGHT」です。
今回、リニューアルということもあり、多少書き直し部分もあります。
正確に言えば、
昔書いたものをそのまま載せる自分が許しませんでした(大滝汗)。
ちなみに、ここでちらりと紹介している任務の話はちゃんとあります。
機会があったら書く予定なので、ごうご期待。
(ブラウザバック推奨)