「……で、休暇なのに、作業を手伝った、ということですか?」

「はい……」




 ケイトが報告しなくても、トレスが報告してしまえば、どっちみち同じ展開が待っている。
 それをひしひしと感じながら、は上司であるカテリーナ・スフォルツァの前に立っていた。




「仕事バカなのは知っていましたが、そこまで仕事バカだとは、思ってもいませんでした」

「いえ、あれはたまたま、偶然発掘しただけで……」

「また、神父アベルを探して、偶然到着してしまったのでしょう?」

「……はい」




 Axのメンバーの中で、一番つき合いが長いためか、カテリーナはすぐに、の思っていることを当ててしまった。




「本当、アベルのことになると心配性になるのね、は」

「まぁ、事情が事情ですから、ねぇ……」




 冷や汗をかきながら突っ立っているを、ケイトは怪しげに微笑みながら見つめている。
 その姿は、何度見ても恐ろしいものを感じてしまう。




「この様子だと……、あなたには休暇が必要ないと思われますから、これから毎日……」

「それだけはやめて下さい、猊化!!!」




 焦ったように言うを、微笑みながら言うカテリーナは、少し勝ち誇ったような顔をしていた。
 それを見ながらも、の顔から苦笑は耐えない。




 もし休暇がなくなったら、彼女の趣味であるカフェ巡りが出来なくなるし、
 紅茶集めも出来ないし、ケーキ作りも出来ない。
 これらはすべて、彼女の唯一の楽しみな上、ストレス発散法だ。
 それをなくしてしまったら困る。




「いいでしょう。休暇が欲しいというなら、条件があるわ」

「はい、何でしょう?」

「……そんな固い言葉使いはやめなさい、




 さっきとは違い、少し声のトーンを高くし、優しくに要求する。
 その発言に、は少し驚いたように、カテリーナを見つめる。




「いつもそんな固い口調じゃ、あなたも疲れるでしょ? せめて、私と2人でいるときぐらい緩めなさい」

「でも……」

「確かに、仕事上では、あなたと私は部下と上司よ。けどそれを離れれば……、昔通りになるでしょう?」




 事実上、部下と上司であるとカテリーナだが、Axが結成される前は、
 お互いにお互いを認め合った「友」だった。
 いや、「友」よりも、もっと深い関係かもしれない。




「……本当によろしいのですか、猊下?」

「構わなくてよ」

「鋭い突っ込み、飛ぶかもしれませんわよ?」

「それじゃ、その倍ぐらいの突っ込みを返さなくてはいけないわね」




 どうやら、今回も勝てそうもない。
 そう思ったは、大きくため息をついたあと、「あの時」のようにカテリーナへ言った。






「あなたには負けたわ、……カテリーナ」

「私はあなたに、勝とうとは思ってなくてよ、






 2人の笑い声が、静かに執務室に響き渡る。

 こんな午後も、悪くないと、ふと思っただった。
















とカテリーナの詳しい関係は過去編、ということで。

がカテリーナを呼び捨てで呼んでいるところを目撃されたら、
きっとトレス辺りから攻撃を受けそうです(え)。
まあ、そう簡単に見つかる人じゃないですけどね。
そういうことは隠すのが上手な人なので。





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