ヴェネツィアの市内航空にて、“アイアンメイデン”の飛行記録の抹消を頼んだとトレスは、 「出航は600秒後だ。それまでに準備を整えておくことを推奨する、シスター・」 「大丈夫よ。荷物も自動二輪車も、もう“アイアンメイデン”につんであるから」 搭乗口のセキュリティーを通過して、2人並んで歩いていく。 「卿とオデッサ子爵とは、どういう関係だ?」 「私が昔、前聖下の護衛をしていたことは知っている?」 「肯定。ミラノ公より話は聞いている」 「私がまだ前聖下の護衛をしていた時に、ある事件で間違えて捉えられた吸血鬼を連れ戻しに来たアストと、 「はやり、オデッサ子爵は危険人物。すぐに排除をすべきでは……」 「それがね、トレス。私も、その時はさすがにそう思ったんだけど、詳しく話を聞くと、相手の言っていること トレスに話しながら、はあの時のことを思い返していた。 「トレスにもそういう人、いるでしょ? アベルとか、ケイトとか、あとカテリーナとかさ」 「俺は機械だ。感情などない」 「ないかもしれないけど、本当は人間に、なりたいんじゃないの?」 「卿の発言は理解不能だ」 「そう言いながらも、時々、貴方が『人間』らしい行動をすることがあったりすると、やっぱり『人間』として生きたいのかなって思うの。自分では気づいていないだろうけど、きっとみんなも、そう思っているんじゃないかしら」 「俺に機械として生きろと言ったのはミラノ公だ。それ以外の者から、その件に関しての命令は受けられない」 「今は理解出来ないかもしれないけど、じきに気づく時が来るわ。そうなれば、もっとこう、硬くなる必要もなくなると思うんだけどね」 「卿の発言意図が……」 「不明でも何でもいいわ。時間がかかってもいいから、分かってくれればいいのよ。さ、早くケイトのところに戻りましょ。もうじき、アベルとアストも乗船すると思うし」 「……肯定」 いまいち言っている意味が理解出来なかったトレスがいたが、はそほど気にしていなかった。 “アイアンメイデン”に到着すると、中でケイトの焦ったような声が聞こえ、 <おふざけになるのはおやめになってくださいまし、アベル神父! 後で叱られるの、あたくしなんですから! 「どうしたの、ケイト? 何かあったの?」 <ああ、さんにトレス神父! アベル神父が、なんだか、オデッサ子爵に浚われただのなんだので、 「どこにいるか、推測出来るか、シスター・ケイト?」 <たぶん、出発ロビーあたりではないかと思います。通信中に、たくさんの人の声がしましたから> 「了解した。これより、ナイトロード神父とオデッサ子爵の捕獲に向かう。シスター・、卿にも同行してもらう」 「え? 私も??」 「卿はオデッサ子爵の知り合いだと言った。ならば、卿が彼女に説得するのが最適だと考えられる。何か、 「……分かったわ、トレス。不服どころか、大歓迎よ。ありがと」 「卿は俺に例を言う理由はない。あるのなら述べろ、シスター・」 「特に深い理由はないけど、ただ、言いたかっただけよ。ありがと」 「……卿の発言意図は不明だが、それよりも先に、ナイトロード神父とオデッサ子爵の捕獲を優先する。 「あ、こら、待ちなさい! ケイト、行って来るわね」 <お願いいたします。私も上から、お2人を探します。見つけ次第、すぐに連絡しますわ> 「分かったわ」 トレスが先にスタスタ行ってしまい、その後を慌てて追いかけるの顔は、
が窓から外に視界を動かすと、水上バス乗場に、ひょろっと背の高い神父と、1人の女性を発見した。 「何で、あんなところにいるのよ、あの2人は!!」 はすぐに近くの出入口から外に出ると、水上バス乗場にいるアベルとアストの元に駆けつけようとした。 その頃、追い詰められているアベルとアストは、まだ客を乗せていない水上バスを動かすと、 「あんなちんたら走って、逃げているつもりなのかしら??」 不思議にそう言うの視界に、思わず呆れるとも言える光景が広がった。 「ドピトーク! ネプティンタ! プロスト! ファリマ……、タウ・カプ・トウリーク・ハ!? 「……すごいこと言ってるわね、全く……」 帝国語が理解出来るため、アストが何を言っているのかすぐに分かり、は思わす呆れたような顔をする。 「……あるわね。分からないふりをするでしょうけど」 とりあえず、早く捕まえで、理由を聞き出さなくてはならないと思ったは、 「Ax派遣執行官アベル・ナイトロード、および、帝国直轄監察官アスタローシェ・アスランに警告―― 「や、やあ、トレス君、さん」 アベルが精一杯フレンドリーな笑顔で見上げたが、それがトレスやに通用するわけもない。 「すみません、何かお騒がせしちゃって……」 「カウント開始。3、2、……」 「わ! わ! ストップ! はい、武器捨てます! 投降もします! ほら、アストさんも」 「……馬鹿」 「ま、今に始まったことじゃないけどねぇ〜」 2人が両手を上げたのを見て、は再び呆れた顔をして、2人を見つめていた。 「“アイアンメイデン”、こちら、“ガンスリンガー”。対象を確保。ナイトロード神父の聖職服務規定違反 「やっぱりカテリーナさんに報告しちゃうんですか、トレス君? ううっ、また怒られる……」 「自業自得よ、アベル。諦めなさい」 <アベ……あたく……後……貴方とお話があります……あら? おかし……ね?> 「どうしたの、ケイト?」
<それ……ーナ様と連絡と……なく……周りがひどい電波障……なの……しら、これ?> “アイアンメイデン”が直上に浮かんでいるのに、こんだけ電波が悪いのはかなり深刻なことだ。 は急いで、腕時計式リストバンドの周りの輪を動かし、一番上を「2」にすると、横にあるスイッチを押した。 『俺を呼んだか、わが主よ?』 「ザグリー、すぐに“アイアンメイデン”とコンタクトを取れる環境を確保して」 『了解。通信プログラム、起動開始。受信先、“アイアンメイデン”艦長ケイト・スコット』 <……あ、さん、ですね。ありがとうございます。助かります!> 「いえいえ、どういたしまして」 プログラム「ザイン」が起動を開始すると、文字盤の上にケイトの「影」が映り、 「ま、所詮は短生種の技術じゃし……、……そうか……、そう言うことか!」 「え? 何がです?」 「アベル神父、2番目の事件が起こった建築会社じゃが……、水利事業専門の会社ではなかったか!? 「え、ええ……。何でご存知なんです?」 「ミラノ公に連絡を! 法王……、いや、あの街の短生種を全員避難させねば! 今回の法王の訪問は、 <どういうことですの?> プログラム「ザイン」から、ケイトの不思議そうに尋ねる。 <カテリーナ様なら、今現在、可動堰の視察にいらっしゃっているはずですが……> 「くっ! よりによって、そこか! すぐに連絡をつけよ! さもなくば彼女も死ぬぞ!」 「そ、それって、一体どういうこと!?」 「……詳しく話せ」 アストの最後の一言に、は驚いたようにアストを見て、 |
再びトレスvsです。
そして最後はひたすらギャグで終わりました。
本編もそうでしたしね。
しかしアベル、もっと他に逃げる手段はあったんじゃないかと思うのですが、
そこはアベルなので、これでよかったのかもしれませんね(笑)。
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