「ありがとうございます、さん。いつも、すみません」 「いいのよ、これぐらい。お安い御用よ」
聖職員用の宿舎に着いてしばらくして、いつも通り、アベルが窓からこっそり現れた。
今日の任務が終わったからということもあり、2人ともケープを脱いでいて、かなりのリラックスムードだ。
「しかし、あれはさすがにすごかったですね。あんなの、作れる人がいるんですか?」 「有力な電脳調律師だったら可能でしょうね。私でも作れるかもしれないけど、考えたくもないわ」 「他人の死体を利用しようだなんて、確かに考えたくないですね」
アベルがに手渡された銃弾の1つを見つめ、それをいろいろな方向から眺める。
「そう言えば、さん。何か情報、手に入りましたか?」 「今のところはまだよ。……まぁ、確かに気になる部分はあるけどね」 「何ですか、それ? 今、言えることですか?」 「それが……」
は黙り込んで、ベッドに座っているアベルの横に腰を下ろした。
「……無理すること、ありませんよ」 「え?」 「さんが、いつも正確な情報でない限り話さないこと、知っていますから」 「アベル……」 「大丈夫ですよ。私には、この銃弾があります。それにトレス君や“教授”、ヴァーツラフさんもいます。だから、 「うん……。……ありがと」
「正確な情報でない限り話さない」。
「……アレク、大丈夫かしら?」 「聖下、ですか? 確かに、カテリーナさんが手を上げた時は、ちょっと焦りましたけど、ヴァーツラフさんの力も 「カテリーナがああするのも、分かる気がするの。教皇にした責任みたいなものを、感じているから」
“騎士団”に勝つためには、どんな力を使ってでも上に上がらなくてはならなかった。
「私も出来ることなら、彼を救ってあげたい。力になってあげたい。カテリーナほどじゃないけど、護ってあげたい」
視線が下がり、知らない間に強く握り締めている手を見つめる。
「だからなおさら、カテリーナやメディチ猊下の言葉1つで彼が苦しんだり、傷ついたりしていく姿を見たくないの。 「さん……」
アベルの手が、自然と彼女の肩に添えられ、自然と自分の方に寄せる。
「……これは難しいかもしれませんけど、出来ることなら、カテリーナさんを責めないで欲しいんです」
心を優しく包み込むような声に、は耳を傾ける。そして、ゆっくりと目を閉じた。
「さんが言うことも最もですし、きっと彼女は分かっていると思います。それに何より、一番苦しんでいるのは、 「……………………」 「今はむしろ、自分がやれる精一杯のことを、聖下やカテリーナさんにしてあげることです。怖がっているのであれ 「アベル……」
いつもはヘラヘラして、力を貸してばかりなのに、こういう時になると、頼もしく感じてしまうのはなぜだろうか。
「……本当はこんなこと、言いたくないの。昔のカテリーナを見ているし、彼女がどんなに苦しんだのかも知ってい 「分かっています。ちゃんと、分かっていますから」
アベルの声が、心にどんどん染み渡っていく。
昔は、こんな風に甘えることなんて出来なかった。
そんな彼女が初めて心を開いたのが……、目の前にいるこの男だった。
「……ごめん、アベル。もう少しだけ……、こうしていい?」 「勿論ですよ。だから……、我慢、しないで下さいね」 「ありがとう……」
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はアレクを幼少時代から見ているので、こういうことが言えるのだと思います。
そしてカテリーナとフランチェスコとも付き合いが長いので、双方の悪口みたいのも言えるのではないかと。
だから多分、誰よりもアレクを守りたい気持ちがあるのではないかと思います。
それにしても……、相変わらずアベルの前では弱くなれるんだな、(汗)。
それも彼女らしいんですがね。
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