数時間後、ホテルの後始末を終え、宿舎に戻ったカテリーナが、共に来ていたに問い掛けた。
「もし知っていたのなら、どうして言ってくれなかったのですか? そうすれば、こちらでも対策を練りましたのに」 「そうですよ、さん。昨日、確かな情報はまだないって言ってたじゃないですか。もしかして、それから後に入った
を庇うように、アベルが優しく言うが、今の彼女には、それすら自分が責められているように聞こえていた。
「いいえ……、前から知っていたわ。ヴァーツラフと再会する、その前から知っていたことだった」 「だったら何故!? 何故言わなかったんです!?」 「……信じたく、なかったのよ」
静かに呟いたに、アベルとカテリーナの動きが一瞬止まった。 「私だって、最初聞いた時、そんなの嘘だと思っていた。けどスクルーは、確かな情報しか伝えないから、それに背く
悔しさと悲しさが一緒に溢れ出し、それを現すかのように、彼女は近くにあった壁に拳をおもいっきりぶつけた。
「……卿の発言は理解不能だ、シスター・」
沈黙を消すかのように、カテリーナの横にいたトレスがに言い放つ。
「確かに、そうなるかもしれません! しかし……」 「さらに付け加えると、その行動により、聖下の身が敵に回ってしまった。よって卿は違法行為をしたとみたされ 「――感情で動いて、何が悪いって言うの、トレス?」
トレスの言葉を黙って聞いていたが、相手を睨みつける。
「人間には、ちゃんと感情っていうのがある。確かにそれで動いではいけない時だってあるけど、あの時の私は信じ 「卿の発言意図が不明だ。それは俺の求めている回答ではない」 「そうよね、分からないわ。だってあなたは機械だから、感情なんてないもの。いいわよ、好きなだけ責めればいい。 「さん! そんな、責めるだなんてこと――!!」 「やめなさい、。もう充分でしょう」
の発言に、アベルが何か言おうとすると、カテリーナは冷静にに言い放った。
「……………………了解した」
主人の言葉にしぶしぶ答えるトレスを確認して、カテリーナがその場から立ち上がり、の側に歩み寄る。
「こんなに強く握って……。痛くなかったの?」
優しくに聞き、懐から白いハンカチを取り出し、歯を使って2つに裂いた。
「……ごめんなさい」 「えっ?」 「あなたの苦しみ、分かってあげられなくて、ごめんなさい」 「猊下……?」 「辛かったでしょう? 苦しかったでしょう? 本当はこんなこと、したくなかったでしょう?」 「…………」
カテリーナの声は、決してを責めているものではなかった。
「でも、もう無理をする必要はありません。結果的にこうなったとは言え、これはあなた1人のミスではありません。 「しかし!」 「もう自分を責めるのはやめなさい。そして、次の対策を練りましょう。でもその前に……、今夜はゆっくり休みな
予想もしていなかった言葉に、の瞳から涙が溢れ出し、カテリーナの掌に落ちていく。
「……ごめんなさい……」
謝罪の言葉が、自然と口から発せられる。
「ごめんなさい、猊下……。……ごめんなさい……」 「謝るのはもうなしです、シスター・。先ほども言ったでしょう? 『これはあなた1人のミスではありません』 「しかし……」 「『しかし』はもういりません。今はこのまま泣いていいですが、明日からはいつも通り、しっかりやってもらいま 「はい……」 止めどなく涙を流すを、カテリーナが優しく包み込み、髪をそっと撫で下ろす。
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ヴァーツラフを失った時と、ノエルを失った時の感覚は同じものではないか、と個人的には思ってます。
裏切られた、失った瞬間は、その人を信頼していればいるほど大きいもので、
にとって、この2人はアベル以外のAxの中で一番信頼し、大切にしていた人物ですから、
その衝撃は大きかったはずです。
だからこそ、カテリーナの言葉が身にしみたのではないかと思うのですが、
皆さんはどう思ったでしょうか?
次は本編から少し離れ、「KNOW FAITH」までの空白の3日間のお話です。
ごうご期待。
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