「そうですよ。私、もう“教授”に頭を向けて寝れませんよ」 「そんな、2人ともやめたまえ。僕はただ、君の案に賛成しただけだし。逆にお礼をいわないといけないのはこっち
「猊下からいただいてから、ずっと使っているからね。今となっては、手離せられないよ」 「何かそれ、よく分かるような気がします。私も昔に買った缶詰とか、ずっと取っておいてあってですね。 今じゃ食べるのがすごく惜しくて……」 「それとこれとは、話が違――う!!」 「ウゴッ!!」 「……その突っ込みにも、だいぶ見慣れてきたよ」
『ここにいます、わが主よ』
「ケイトには、もう繋がっているの?」 『〔ザイン〕を経由して、接続完了しています。お呼び出ししますか?』 「ええ、お願い」 『了解。画像転送ファイル、開封(オープン)』
プログラム「セフィリア」が言うと、「彼女」の周りを包み込んでいた光が前に照らされ、
「そんな、私は当然のことをしただけよ、ケイト。ここには、あなたにもいてもらわないと困るんだから。さ、早速 <はいっ!> 「アベル、荷物、ここに置いてね」 「はいはい」
「今回は、レアチーズにしてみました!」 <紅茶は、レアチーズケーキにぴったりなアールグレイにしてみましたわ> 「おっ、いい組み合わせだね」 「アベル、このポットに水を入れてきて」 「はい。以前、使っていたところって、まだ使えるんですかね?」 「あそこなら、まだ使用可能だよ。どうやら生徒達の間で紅茶を囲む習慣があるらしくてね。 このテラスもよく使われているのだよ」 「伝統は引き継がれている、ってことね」
アベルが水をポットに入れに行っている間に、とケイトがてきぱきと準備を進めた。
数分後、アベルがポットに水を入れて戻ってくると、コンロの上に置き、茶葉とともに沸騰させる。
「そりゃ、当然だとも。それじゃ、あまりにも失礼だしね」 「“教授”も、たまにはこういったお休みも必要ですしね。もうそんな若くないのですからね」 <そうですわよ、“教授”。なんなら今度、リラックス効果のある紅茶のレシピ、お教えしましょうか?> 「それは助かるよ。ありがとう、ケイト君」
ケイトはアベルと“教授”の間に腰を降ろした。
「ええ、もちろん」
<でも、見つかっただけでもいい方です。あとはもう……、灰の中ですから> 「そう、ですよね……」
それを聞いたが、思わずため息をついてしまうのも無理はない。
僕も本当はいろいろ話したかったのだが、やはり無理だったかもしれんな」 「彼女はいつもそう。10年前のあの事件があってからは特にね」 「でも10年前のあの事件がなかったら、私達はこうやって集まることがなかったわけですし、 暗いことばかりではありませんでしたよ」 <そうですわね。……あら?>
「ああ、これかね。ヴァーツラフの写真を探していたら、ちょうど出てきてね」
「本当、よく残っていたわね。ウィルって、密かに物持ちいいとか?」 「こういうことに関しては、ね」 <カテリーナ様、かわいらしいですわね> 「でも、当時から尖ってたのよね、彼女」 「確かに。……カテリーナさんも、連れて来たかったですね」 <仕方ないですわ。今回のこと……、一番辛いのはカテリーナ様でしょうから> 「そうね……」
現に、弟君の苦しみにさえ、目を向けなかったあなたに』
「……ハァ〜、相変わらず、食い意地張ってるんだから」 <ま、いいじゃありませんか。頂きましょう> 「それもそうだね。僕も、久々のお茶会だ。アルビオン人にとっては、一番大事な時間だからね」 「そら来たっ! そんじゃ、いただきま〜す! ……うん、やっぱさんが作るケーキは最高です!」 「ありがとう、アベル。今日はいつも以上に気合入れて作ったからね」 「う〜ん、このアールグレイの香りもいいね。今年の新作かね?」 <はい。昨日、さんが手に入れたばかりで、振舞うのも今日が初めてなんです> 「……さん、紅茶ありすぎですよ」 「あら、それでも1週間に1つのペースでなくなっているのよ」 「紅茶好きな君らしいね」 <ですわね>
「う〜ん。本当は十字にかけようと思ったのだが、中に埋めた方が、彼にとってはいいのかもしれないねえ」 「私も今、そう思ったのですが……」
「ええ。久し振りにつくったから、ちょっと崩れちゃったけど」 <でもきっと、ハヴェルさん、喜んでくれますわ> 「喜んでくれなかったら、いくら相手がヴァーツラフでも許さないわよ」 <ま、さんたら。……どうやら、出来上がったみたいですね>
「土の下に埋めることにしたんです。その方が、ヴァーツラフさんに届くと思って」 「なるほど。確かに、その方がいいかもしれないわね」 「おや、なかなかかわいいリースじゃないか。こういうことも出来たとはね」 「昔、ちょこっとやっててね」 「そう言えば、いつも扉につけてましたね」 「季節ごとに、こまめに変えて、ね」
<そうですわね。本当、今日はありがとうございました。お陰で、久し振りに楽しませていただきましたわ> 「どういたしまして。また、一緒にお茶会しましょう。その時は、スフォルツァ猊下、――いいえ、カテリーナも <はい。セフィリアさんも、ありがとうございました> 『いえ、私はわが主の指示に従ったまでのこと。お礼を言われる立場ではありません』 「まあまあ、セフィー。お礼ははちゃんと受けるのが礼儀よ」 『――分かりました、わが主よ。――画像転送ファイル、閉鎖(クローズ)』
「え、え〜! 何でまた私なんですか!?」 「ま、せいぜい頑張りたまえ」 「“教授”までそんなぁ〜!!」
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前回は短編集に収録していましたが、今回からは本編の続き、といった感じで、
こういう形で掲載しようと思いますので、よろしくお願いします。
この庭園の設定は、Canonに収録されているものを参考にしています。
幼いカテリーナを囲むように、教授、ヴァーツラフ、ケイト、そしてアベルがいる、あれです。
それにプラスしてがいた、という設定になっています。
そのイラストを見ながら読んでいただけると、さらに臨場感が出るのではないかと思います。
もしよろしかったら、是非。
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