「これだから、ほどほどにして下さいって言ったのに。飲んだの、久し振りでしょう?」 「疲れも一緒に来たのよ。本当、かなり参ったわ」
アルコールは、もともと強い方だ。
「でも巧い手だね、それは」 「そう? 私としては、かなりムカついたんだけど」 「私も、最後まで人を馬鹿にした話だと思いましたよ」 「だってそれなら、枢機卿達も今後、彼をないがしろに扱えなくなる。名簿をそのままにしておけば、取り上げられ
長官執務室への廊下で一緒になった“教授”が納得しながら言うが、とアベルには納得がいかないようで、
「でもま、相手はケルン大学きっての天才と呼ばれてた人だから、いい手と言えば、いい手なのかもしれないわね」 「え? あの人、そんな風に呼ばれてるんですか?」 「あら? 知らなかったの、アベル?」 「バレンシア公子アントニオ・ボルジアと言えば、23歳で7つの博士号を持っている天才だよ。うちの大学でも 「そう言えば、そんなこと言っていたわね。確か、いつでも就職出来るように、枠を確保しているんでしょ?」 「然り。ま、あとは公子次第だがね」 「……へえ、あの人がねえ」
アベルが意外そうにそう言うと、は最初にそのことを聞いた時のことを思い出した。
もう彼に会うこともないし、関わりたくもない。
「それより、ウィル。あなた、また眠ってないでしょ? 顔色があまりよくないわよ」 「そうなんだよ、全くたまらんよ! こんなことなら、まだ人買いども相手の方が、気が休まったね。ナイトロード 「…………」 「いや……、そんなこと出来るような状況じゃなかったと思うわよ」 「そうかね? そうなると、折角の機会を無駄にしたことになる、てことだな。勿体ないよ、2人とも」
“教授”の言葉に、思わずアベルももうんざりそうな顔をすると、長官執務室の前に到着して、扉をノックした。
「アベル・ナイトロード、ならび、・キースです。お召しにより参上いたしました」 「どうぞ。お入りなさい」
アベルが扉を開けると、執務卓に座っていたカテリーナが悪戯っぽく笑っている。
「あら、ずいぶんと男前があがっていますね、ナイトロード神父。……ケルン出張は大変だったようですね?」 「はあ、いろいろな意味で」 「シスター・も、ご苦労様でした。撤収作業、スムーズに進んだそうですね? ……どこか、体調を崩しているの 「いえ、これは大したことないのでお気になさらず。……でも今回ばかりは、つくづく彼が可哀想だと思いました。
アベルとが呆れたように言うが、相手は未だ、笑った顔を緩める気配がない。
「一番厄介だったのは、新教皇庁の連中なんかより、護衛してた当人でしたけどね……。カテリーナさん、今後から 「私も同感ですわ、猊下。そうすれば、少し覚悟を決めて望めますし」 「危険物って、ひょっとして、ボルジア公子のこと? でも、公子の話だと、ナイトロード神父とは随分と息のあっ 「そんなこと言っていたの、公子?」 「え? 知りませんよ、そんなこと。誰ですか、そんな愉快な寝言言ったのは? だいたい私と彼とは――」 「生死をともに交わした戦友、だろ、アベル君?」
後ろから聞こえた声に、アベルの眼鏡が思わず零れ落ちそうな目玉をし、
「ああ、ナイトロード神父とシスター・とはすでにお知り合いでしたね。“教授”には紹介しておきましょう」
硬直したアベルとを楽しそうにみながら、カテリーナはソファに座っていた先客を“教授”紹介する。
「こちらは今度、教皇庁に入庁した新人司祭の……」 「アントニオ・ボルジアです。―――どォぞヨロシク、先輩方♪」
「う゛〜、頭痛が再発したぁ……!!」 「そんな、私も痛くなりそうなんですから、ここは我慢して下さいよ!!」 「我慢だなんて、出来るほど軽いものじゃないんだから無理よ!!」
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言わんこっちゃないですよ、この人は(汗)。
てなことで、アントニオ、無事に(?)仲間入りです。
彼女としては、異端審問局にいるマタイと同じぐらい天敵になるでしょう。
性格的に合わないのでしょう、きっと。
とりあえず、頑張ってもらうしかありません。
みんないい人じゃ、つまらないですしね(そういうものか)。
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