春の暖かさが少しずつ変わろうとしていたある日、ミラノから“教授”と入れ替わりで戻って来たは、 長い渡り廊下を歩いている。温かな日差しが注ぎ込み、心も自然と温かくなる。 「あら? あれは……」 そんな空気に浸っていると、目の前から僧服を来た2人の男が向かって来る。 背の高い男はアベルなのは分かっている。 しかし、もう1人の男だけは、しばらくの間分からなかった。 「レオン、10月までまだ先があるわよ? そんな仮装をして、どこに行くの?」 「……スゲー酷いこと言うんだな、」 がそう言うのも理由がある。 「さん、ミラノからお戻りになられていたのですね?」 「ええ。“教授”が昨日ミラノに着いたから、入れ替わりでね」 「そう言えば、拳銃屋、怪我したらしいな。大丈夫なのか?」 「ウイルスに感染してなかったし、修整プログラムもロードしておいたから大丈夫よ。 普段と違う男と、いつもと同じほえほえな男と共に、カテリーナがいる執務室まで進む。 「ところで、2人とも。今回の任務はどうだったの?」 「え、あ、ええ、そりゃあ、もう。ね、レオンさん?」 「あ、ああ。いつも通り、問題なくするんだぜ」 「ふ〜ん、問題なく、ねぇ〜……」 実は先日、ケイトから「妙な領収書が現れた」と連絡が入ったのだ。 『“クルースニク02”と“ダンディライオン”の両者が、ネバーランド島でのジェームス・バレー教授の実験で 「ま、無事に任務を終えてきたのなら、そんなに怯えないで、堂々とスフォルツァ猊下に報告することね」 「そ、そりゃあ、そうに決まっているだろ。なぁ、アベル?」 「もちろんですよ、さん。やだなぁ、そんな、変な勘違いしちゃいけませんよ。私達、ちゃんとやるべきこと ますます怪しいと思って睨んだのだが、まぁそれも時間の問題だ。
「報告書は読ませてもらいました」
さて、いつまでこの体制が続くことやら。 「任務は滞りなく完了したようですね。2人ともご苦労様でした」 「お褒めに与かり光栄でございます!」 いつになく礼儀正しいレオンに、思わずプッと吹き出してしまう。 「ネバーランド島を根城に海賊行為を働いていたアルビオン貴族ジェームス・バレーのアジトを強襲。 「吸血鬼は殲滅したのですね?」 「「はっ!」」 本当は違うなど、口が裂けても言えないのだが。 「結構。さすがです。……ああ、そうそう。そういえば、ちょっとだけ確認しておきたいことがあるのですが、 「「は?」」 2人の体が、一瞬凍りつく。 「確認とおっしゃられますと……」 「なんでしょう?」 「そんなに緊張しなくてもいいわ。ごく些細なことなの。……シスター・ケイト、いますか?」 <はい、猊下> 「妙な領収書が経費生産で出てきましたね? “帝国”方向に向かう貨物船をまるまる1隻調達したとか。 「さ、さて……、なんだったっけな、アベル君?」 「やっ、私、お金にはうとくてですね。3桁以上の金額見ると知恵熱が……」 「よろしい。確かに、Axの性格上、経費に不明瞭な点が出ることもあるかもしれませんね」 「そうですとも! さすがは、猊下。話が分かってらっしゃる」 「そうそう。そうですよ。……いや、持つべきは聡明な上司ですね、うんうん」 「嘘ばっか」と思いながらも、はまだ笑いを堪えていた。引きつった顔が想像出来る分、余計に苦しい。 そして、笑いがはじけるときが、ついにやって来る。 「ただし、事後において私を納得させられる報告がない以上、この支出を経費として認めるわけにはいきません。 「「なにーっ!」」 アベルとレオンのショックな顔が目に浮かび、ついには声を上げて笑い出した。 「お、おい! そんなに笑わなくてもいいじゃねえか!!」 「だ、だって、おかしいんだもの、2人とも。駄目だ、笑いが止まらない……」 「酷いですよ、さん! それより、ど、ど、どうしましょう、レオンさん!? 私、たぶん世界で最も貧しい 「んなことより、デマぶっこいてんのがばればれじゃねえか! なんか気合いの入った言い訳は用意しなかった 「カテリーナさんに言い訳!? 私、そんな命知らずな真似は……」 <……あ、あの、猊下?> ケイトが微動だりせぬカテリーナを覗き込むと、はようやく笑うのを止め、心配そうに彼女を見た。 「大丈夫ですか、猊下? 何か、お茶でも用意しますか?」 「熱いのをお願い。……それにしても」 頭痛をこらえる表情で額に指を当てると、カテリーナは珍しく深いため息をつき、とケイトに言った。 「子供だわ、2人とも」 「今に始まったことではありませんわよ、猊下」 <そうです。もっと厳しくしてもいいぐらいですわ> |
ガキ度100%なアベルとレオンの「NEVERLAND」です(笑)。
この時はものすごく苦しかったと思います。
いや、苦しかったに違いない。
そして冒頭、どういう意味でこの会話をしたのか、謎は解けましたか?
この台詞、RAM6でも言いそうですが、あの時はその場にいなかったので書けませんでした。
そしてもう書くことはないでしょう(泣)。
ちょっと淋しいかも。
(ブラウザバック推奨)、