朝の急がしさから一変し、静かな時間が過ぎていく。 「……少しは、落ち着いたかしら?」
「さん、それ……!」 「バルセロナで、なかなかいい感じだったから買ったの。いつも僧服じゃ、疲れるからね」 白のワンピースを身にまとったがゆっくり歩き出し、塀の上に腰掛ける。 「……ノエルが、ね」 「はい?」 「いなくなる前に、私にこう言ったの。『貴方とアベル君の関係が何なのかは分からないけど、あなたは彼のそば あの日、ノエルは何かを悟ったかのようにに言った。 「……さん」 「ん?」 「貴方が最初、私がやめるのであれば、自分もやめるとおっしゃいましたよね」 「ええ。……それが、どうかしたの?」 「あの時……、なぜだか分からないんですけど、あなたにはやめて欲しくないって思ったんです。あなたはカテリーナ 「大事にしているのは、アベルも同じじゃなくて?」 「そうですけど、貴方と同じかと言われると……、少しだけ疑問に思います」 アベルの顔が一瞬曇ったように見え、は呆れたようにため息をつくと、彼の左手を掴み、強く握った。 「そんなこと、誰かと比べることじゃないわ、アベル」 「え?」 「自分が精一杯大事にすれば、それでいいの。誰かと比較することじゃない。アベルがアベルなりに、 「さん……」 の声が、アベルの胸に響き渡る。 「それに私は、あまり仲間とか、そういうの、よく分からないし。あなたの方が、私なんかより、仲間を想う気持ち アベルの髪にある黒いリボンに触れ、そっと撫でる。 「……ね、このリボンを最初につけた日のこと、覚えている?」 「ええ……。私が散々嫌がったのに、貴方が無理矢理、つけたんですよね」 「だって、そうでもしないと、切り替えが出来ないと思ったから」 「……確かに、そうかもしれませんね」
「こんなもの、必要ない。頭が重くなって、うっとうしくなるだけだ」 「そう言われても、そんな髪をダラダラ伸ばしたままじゃ、邪魔でしょうに」 「適当に輪ゴムとかで縛るから、放っておいてくれ」 「放っておいたら、だらしなくなるのが目に見えているわ。さ、大人しくしてなさい。別に、痛いことをするわけ
「この10年間で、いろいろなことがあった。その間に、アベルはすごく成長したと思う。だって、あの無愛想で 「あなたに言われたくないですよ」 「確かにそうだけど。けど、私もカテリーナにケイト、トレス、レオン、ユーグ、ウィル、そしてノエル……、 その場に立ち上がり、ゆっくりと前進する。 「だから……。だからもう、勝手に1人で行動しないで。1人で勝手に、決めないで。私に相談しにくかったら、 体が小刻みに震えていて、声も同じように、かすかに震えている。 「もう1人で苦しむ姿なんて、見たく、ないのよ……」 後ろから、コツコツと靴音が響き、それが真後ろで止まる。 髪をそっと撫で下ろすその手はとても大きくて、温かい。 「……それじゃ、私とも約束して下さい」 「何を?」 「……もう1人で、苦しまないって、約束してください」 「そんなこと、アベルに言われたくない」 「確かに、そうですけどね」 苦笑しながら言うアベルに、はかすかに微笑んだ。 の顔は涙のせいで濡れて、視界もあまりはっきりしていない状態になっていた。そんなの頬に、アベルがそっと 「……もう、大丈夫です」 「え?」 「さんを悲しませるようなこと、もうしませんから」 「……本当?」 「ええ」 「約束、してくれる?」 「もちろん。……約束します」
ゆっくり目を閉じ、お互いの想いを伝え合う。 沈んでいく太陽の光が、2人を温かく照らし続けていった。 |
最後の最後まで、ラブラブでごめんなさい(大滝汗)。
でもアベルが、「さんは白の方が似合ってますよ」と言ったので、どうしても白の服を着せたかったのです。
ただそれだけです、ふふっ(笑)。
これで、ようやくOVERCOUNT終了です。
次はRAM3。
また大事な人を失ってしまいます。
(ブラウザバック推奨)