「あいつ、本気で全部見るつもりでいるのか?」 「今のアベルなら、なりかねないわね」 「まぁとりあえず、先に止めてみるしかねぇ。それからだ」 「了解」 自動車を出て、修道院のベルを鳴らす。 奥から男の声と、修道院院長らしき初老の女性の声がする。 「時間がない。時間がないんだ。まだ調べていない鐘がこんなにある。……早く調べないと、ここもあの街みたいに 「きゃあ!」 荒々しく突き飛ばされ、床が倒れた院長の姿を見つけ、が急いで登ろうとした。 「レオン!」 「ここは、俺とトレスで何とかする。行くぞ」 「了解」 をその場に残して、2人はアベルを追って上へ登る。 レオンとトレスが追いつくと、レオンがアベルの襟元を後ろからつかみ、そのまま後ろに引っ張った。 「修道院長様、大丈夫ですか!?」 「え、ええ。私は大丈夫です」 「すぐに彼を追い出します。本当、ごめんなさい」 が精一杯に彼女へ謝罪すると、彼女の手を取り、立ち上がらせた。 「ここで何をしている、ナイトロード神父?」 「おいおい、しばらく見ねぇ間に随分とやさくれちまったなぁ、アベル」 「お願いだから、もうこれ以上、他人に迷惑を賭けないで欲しいものね」 何も感情も籠らない氷のような声と、嗄れたダミ声よ、透明感のある声とが、無慈悲に響いた。
レストランの一番奥ばった席に、百科事典なみの巨大なステーキとボウルに山盛りのサラダ、 「レオン、あなた、サラダ食べないっていうんじゃないわよね?」 「俺ぁ、昔から神父と生野菜は死ぬほど嫌いでね。食ってもいいぜ」 「体のバランスのため、食物繊維を取ることを要求する、ガルシア神父」 「トレスの言う通りよ。糖尿病になってもいいの?」 「肉食ったら、その分エネルギーで燃やしゃあいいんだよ。ちょろいもんだぜ」 ナイフで切り分けたステーキをほおばりながら、レオンがそう言い捨てる。 「トレス、レオンの額と顎をつかんで、おもいっきり口開けさせて」 「了解した」 「はっ? お前、一体何す……、うがっ!」 トレスがガッシリ額と顎をおさえられ、なおかつそのまま掴まれ、レオンは1人あたふたする。 「は〜い、レオンく〜ん。大人しくお野菜食べましょうねぇ〜」 「はひふんはよ、ふれあ、ほい(何すんだよ、、オイ)!」 口に野菜が入ったのを確認すると、トレスは手を離し、は満足して、自分で注文したカルボナーラを食べ始めた。 「……は〜、苦しかったぜ〜。、今度何かあったら……」 「私、負けないわよ」 「うっ……」 の不適な笑みを見た瞬間、レオンは反抗出来なくなり、大人しく、 こんなことが繰り広げられているのにも関わらず、アベルはずっと沈黙を続けていた。 「おいおい、何不幸の国から不幸を広めに来たようなツラしやがる……。遠慮するこたねえ、お前の奢りだ。 「今夜は厳重体制で行くんだから、力を蓄えなきゃ」 「ガルシア神父とシスター・の言う通りだ。法王宮への出頭時間まで、1800秒を切っている。補給は可及速や 「は大丈夫なのか? 準備しなきゃいけないんだろ?」 「少し遅れても平気よ。メディチ猊下がいらっしゃるんなら、急いで行く必要ないもの」 都市警と特警がいるのであれば、急いで彼の護衛に行く必要もない。 「法王宮には24時間態勢で任務につく。栄養補給は、可能な限り行っておくことを推奨する」 「……きません」 「何?」 「私は行きません。私にはやらなきゃいけないことがたくさんある。……まだ調べてない鐘が、ほら、こんなにある 「馬鹿か、てめえ。ローマに、一体いくつ教会があると思ってんだ? 金持ちの個人礼拝堂まで勘定したら、300 「市内の金に関しては都市警と特警の合同調査がすでに実施されている。結果は全て陰性だった」 「それに、もし何かあったら、私のプログラム達がすぐに教えてくれるし、メディチ猊下だって、そのために都市警 3人がそれぞれに言っても、アベルにとっては関係のないことらしい。 「以上を踏まえれば、ナイトロード神父、卿の調査は違法であるうえに、無駄だ。――なお補足しておく。法王宮の 「だったら、やめますよ」 「やめる? 意味不明だ。街道の再入力を」 「やめますよ、Axも派遣執行官も……。それなら、いいでしょ?」 「……何ですって?」 「……それ以上の抗命発言は敵前逃亡とみなすぞ、ナイトロード神父」 「やめなさい、トレス」 服のホルダーに手を伸ばしたトレスを、横に座っていたが止めに入った。しかも、かなり冷静に。 「こんなことで、そんな大きなの撃ち込んだら、周りの警官、全員を敵に回すことになるわよ」 1/3のカルボナーラを残し、布巾で口元を拭くと、彼女はアベルに静かに言い出した。 「アベル。あなたがAxをやめるのであるなら、私もAxを、やめなくてはならない」 「……え?」 の言葉に、アベルはもちろんのこと、レオンもトレスも驚いたような顔をする。 「おい、どうしてへっぽこがやめるのに、お前がやめないきゃいけないんだ!?」 「ガルシア神父の言う通りだ、シスター・。卿がナイトロード神父と一緒に止める確率は、0.01パーセント。 「でも、私は彼の“フローリスト”。アベルが残るのであれば残るし、やめるのであればやめる。それが、私と彼と “クルースニク”と“フローリスト”。 「……でも、今の私は、やめるわけにはいかない。レオンやトレス、ケイト、それにスフォルツァ猊下を見捨てるこ 真剣な目つきで、アベルに言い放つ。まるでアベルが、なぜやめるのか、分かっているかのように。 「とりあえず、私は先に自動車に戻って、今夜の予定の再確認をしてるわ。出来るだけ、早く戻って来て」 「お、おう。……」 「何?」 「おもいっきりやっていいか?」 「……ほどほどにね」 レオンが何を言いたいのか分かったらしく、は1つ溜息をついて彼に許可を出すと、 しかし自動車の後部座席に乗り込もうとした時、それは一気に殺気へと変わっていった。 「……高見の見物ってやつ? ムカつくわ」
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が辞めるという発言は、彼女としては当然の発言です。
それが当たり前だと思っているので。
これも、「繋がり」の関係なのですが、これも詳しくは過去編にて。
そして遠くで高見の見物をしている人達については次のお話で。
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