猛スピードで走り続ける自動二輪車の後ろで、アベルが少し怯えながらも、にしっかり捕まっている。
 普通だったら、逆にならなくてはいけないのだが。




さ〜ん! このスピード、やばくないですか!?」

「いいから、黙ってなさい! こっちは急いでいるんだから!」

「急いでいるのは分かりますが、交通規則はしっかりと……、うわおっ!!」




 突然の左折に、アベルが慌ててにしがみ付くと、そのままの勢いで急ブレーキをかけた。




「スクルーが言っていた場所はここね。……大丈夫?」

「すでに天国行きそうです〜……」




 アベルが少しへたりながらも自動二輪車から降りると、はそのままエンジンを止めることなく、
 両手につけていた手袋の裾を引っ張り、高々にエンジンをふかした。




「あれ? 行かないのですか?」

「アベル、私が何も理解してないと思っているわけ?」

「何を、です?」

「使うんでしょ……、“あれ”」




 の言葉に、アベルはハッとしたように彼女を見て、そして苦笑しながら言う。




「……やっぱり、バレましたか」

「傷を治す時、半分しか完治してない状態でやめろって言うんですもの。すぐに分かったわ」

「でも、それとさんが行かないのと、どういう関係があるんです?」

「今行ったら……、きっと私も、使ってしまうから」

「……え?」

「こんな大掛かりなことを仕掛けた本人に向かって、使ってしまいそうだから」




 バルセロナでノエルを殺し、アルフォンソの手を借りて、ローマに大きな爆弾を仕込んだ相手を、
 アベルと同じぐらい許せない気持ちでいっぱいになっていた。
 しかしアベルの「あれ」と一緒に起動させてしまったら、一気に廃墟になる可能性が高い。
 そうなってしまったら、カテリーナですら助けるのが困難になってしまう。




「だから、ここはすべて、アベルに託そうと思って。私が出てもいいけど、そうなると、余計ややっこしくなり
そうだから。その代わり、ちゃんと戻って来なさいよ」

さん……、ありがとう」

「私はこのまま、レオンに合流する。トレスの方は、本当に1人でもやっちゃいそうだから、ほっといても大丈夫
だし。それにもしもの場合のために、優秀なプログラマーがついてた方が心強いし」

「……そうですね」




 アベルの腕をそっと掴み、そのまま自分の方に引き寄せ、優しく抱きしめる。
 アベルも、に握られていない方の腕を彼女の背中に回すと、強く抱きしめた。




「これだけ力があれば、大丈夫ね」

さんが、半分ですけど治してくれましたから。それに今も、こうしている間に、力が戻っていくようで安心し
ます」

「そう……、よかった」




 そっとアベルを離し、優しく微笑むその顔は、久し振りに見る「天使」の笑顔だった。
 近頃、ずっと忙しくて、この笑顔を見ていなかったような気がする。




「……ありがとう、さん」

「どういたしまして。さ、カテリーナが厄介なことになる前に、早く行って」

「あ、はい! ……さん」

「ん?」

「やっぱりあなたは……、白の方が似合ってますよ」

「……え?」

「じゃ、行ってきます!」




 驚いた顔をしているを無視して、アベルは彼女に背を向け、地下墳墓(クリプタ)へ入っていった。



 アベルが言った言葉がよく分からず、一瞬困ったような顔をしただったが、しばらくして、
 すぐにその意味を理解し、自分の身の回りを見回して、少し苦笑した。




「そんなこと……、あるわけないわ」




 ポツリと呟き、再びエンジンをふかす。
 そして次の目的地に向かって、再び走り出したのだった。

















ラブラブですみません(汗)。
ほら、無性に書きたくなる時とか、あるじゃないですか(ないってば)。
軽く見逃しといてください。

でもラブラブ、楽しいんですよね(え)。
また書きたいものです。
←書く気満々





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