は休暇を利用して、聖メルゼデス女子修道会のミサの欠員を埋めるべく、 (こうなるんだったら、任務以外の日はこの格好の方がいいのかも) お祈りを捧げながらも、そんなことを考えつつ、何とか無事にミサを終えた彼女は、 「その様子だと、相当堪えているみたいね、ちゃん」 伸びをしながら後ろを振り返ると、声をかけた人物の顔を見て笑顔に変わっていく。 「ノエル! 久し振りね」 「本当、半年振りよ、ちゃん。ここまでは無事に来れた?」 「ええ。『ノエルに頼まれた者だ』って言ったら、すぐに通してくれたわ」 「そ。よかった」 ノエル・ボウは元Ax派遣執行官“ミストレス”として動いていた人物で、 「さて、今日はこのまま何もないんでしょ? 2人でランチでもどう? お礼にご馳走するわ」 「本当? ありがとう。でも……」 「着替えたいんでしょ? 私もちゃんの尼僧服姿より、僧服姿の方が見たいわ」 「……でも、ちょっと慣れさせたいから、このままでいいわ」 「そ? じゃ、行きましょう」 たまには、このままでも悪くない。今日は何もないし、着替えに戻るのも面倒だ。 街は平日だと言うのに賑わっていて、昼時ということもあってか、 「どうしましょう。ちゃんのことだから、カフェとかの方がいいのよね?」 「そんな、気を使う必要なんてないわよ。……あ、あれ買って、公園とかで食べるのはどう?」 「そんなのでいいの?」 「十分満足よ」 ノエルは確認するようにに言うと、彼女は満弁の笑みでそれに答えた。 移動ワゴンでバケットのサンドイッチと紅茶を購入すると、近くの公園のベンチに座る。 「こういう風にランチを取るのも、悪くないわね」 「でしょ? 今、これがお気に入りなの」 「いかにも、ちゃんらしいわね」 「ふふっ」 さすがのも、ノエルが相手だと子供っぽくなってしまう。 「ところで明日、アベルがこっちに来るみたいだけど、任務?」 「みたいね。実は私も、それを手伝うように言われているの。ちゃんは、その間も休暇?」 「そ。スフォルツァ猊下は、私をよっぽど休ませたがっていたのか、アベルとノエルの任務を何も教えてくれな 「ちゃんは働きすぎなのよ。だから、仕事馬鹿って言われるんじゃない」 「そうだけど……」 確かに、はひたすら動き続けている。 「ちゃんはカテリーナ様に言われた通り、ゆっくり休めばいいの。観光だってしてないでしょ? 「そんな、ノエルに無理なんて言えないわ。観光ぐらいなら、私1人でも出来るし。それにアベルも 「ふーん、相変わらず、お互いに想い合ってるわけね。……何か進展あったの?」 ノエルの最後の一言に、は少し焦ったように、紅茶で咽てしまい、咳き込みながら前かがみになる。 「ちゃん、大丈夫?」 「ノエルが変なこと、言うからでしょ!?」 が慌てたように、もう一度紅茶を飲んで落ち着かせ、ノエルは背中を擦りながらも笑っていた。 「どうやらその様子だと、特に進展はなさそうね」 「進展って、何の?」 「またとぼけちゃって」 ここ最近の任務――マッシリアでもヴェネツィアでも、アベルはを頼っているように見うけられた。 しかしとしては、こうなるのは当たり前で、特に気にすることではなかった。 「そういうノエルはどうなの? 誰か気になる人とか、出来たの?」 「周りが女性ばかりだもの。そう簡単には出来ないわよ。……でも」 「でも?」 「……アベル君みたいな人がいれば、すぐに告白するのに」 「……まだ未練があるの、アベルに?」 「あら、人聞きが悪い。そんなんじゃないわよ」 「本当にそうかしら?」 「何? 私を疑っているの?」 「別に、そんなんじゃないわよ」 Ax時代、という存在がいつつも、ノエルはアベルに「仲間」以上のものを持っていた。 しかしには、それを支える“光”みたいなものを感じていた。 「そう言えば、ノエルって昔、よくアベルを連れてあっちこっち行っていたわよね」 「そうそう。そのたびに彼、困った顔をしていたわ。懐かしい話ね」 「全くよ」 当時のアベルの顔を思い出し、2人でクスクスと笑い出す。そして昔話に、花を咲かせていった。 もノエルも、こうやって話すことが好きだった。 「さて、私はそろそろ行かなくちゃ。実は、アベル君に頼まれて、ちょっと潜入捜査しているのよ」 「そうだったの? そんなこと、アベルは一言も……」 「言ってしまったら、ちゃんのことだから、絶対に自分も参加したがるからって、口止めされていたのよ。 「アベルが、そんなことを……」 いつも仕事のこととか、に話してくれるだけに、今回のアベルの行動が嬉しい反面、淋しさを感じていた。 「……ちゃん。アベル君は貴方を休ませたかっただけで、それ以外のことは何も考えていないと思うの。 「落ち込んでなんて……」 「そう、どんよりとしているのを、『落ち込んでいる』っていうのよ」 ノエルの言葉が、優しくの胸に響く。 「大丈夫よ。アベル君は、あなたを1人置いて、どこかに行くような人じゃないわ。それに、ちゃんの前にいる彼、 「そうかしら?」 「ちゃんはそれが普通だと思っているから気づかないのよ。でも他人から見れば、それが明らかに違うって 抱きしめていた手を緩め、の頬にそっと触れる。 「いいこと、ちゃん。貴方とアベル君の関係が何なのかは分からないけど、あなたは彼のそばにいなくちゃ駄目よ。 「ノエル……」 「あ、そうそう。今回の任務が終わったら、3人でフラメンコを見に行きましょう。本当、すごくきれいなんだから。 「……本当?」 「ええ。だからほら、元気出して。ね?」 「うん……。……ありがと、ノエル。本当に……、ありがとう」 がお礼を言うように微笑むと、ノエルも負けないぐらいの笑みで答えた。 ノエルには、これからもたくさんのことを教えてもらわなくてはいけないのかもしれない。
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「SILENT NOICE」と「GUNS N’ SWORD」は話が繋がっているので、
一気に進めたいと思います。
で、このシーン、ほんわかしているシーンが書きたくて書いたのですが、
ノエルの登場がこれでおしまい、というのが悲しいです。
過去編にまた登場する予定なので、その時にはおもいっきり書きたいと思います。
待っててね、ノエル!
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