それから2日後、何者かによってサンツ駅が倒壊され、海に沈んだというニュースが流れた。 『駅の中には、ドメネック製薬社長、ハイド・ドメネック博士――本名ジェームス・バレーがおり、 「ということは、相手は彼を抹殺するために、あんな大掛かりな爆発騒動を起こしたって言うの? 昼下がりのあるカフェで、は珍しくカプチーノを口に運びながら、 「それで、アベルとノエルはそのことで調査しているわけでしょ? こっちで何らかの情報を入出出来れば、 『わが主よ、汝は今、休暇の時。“ミストレス”の発言通り、仕事にはかかわらない方がいい』 「分かっているけど、そうとも言っていられる状況だと思っているの? こうしている間にも、影でいろいろ 『いい加減にしろ、わが主よ。我を怒らせる気か?』 プログラム「スクラクト」に怒られると碌なことがないことを知っていたため、 「そう言えば、ケルンにいたアルフォンソ・デステ大司教様が、もうじきローマにお戻りになるのよね?」 『その通りだ。それが、どうかしたのか?』 「昔、前聖下に仕えていた時に、よくお会いになっていたのよ。とても気立てがよく、柔らかな感じのお人だったわ。 “帝国”を早く潰してしまいたいフィレンツェ公フランチェスコ・ディ・メディチ、 「……あの日、私は賛成して、よかったのかしら?」 昔のことを思い出し、ふとは呟いた。 「確かに、カテリーナとメディチ猊下のやったことは正しいと思う。カテリーナが上がらなければ、Axだって 『後悔しているのか?』 「どうなんだろう? 後悔、なのかな。でも、もう戻すことなんて出来ないし、後悔しても仕方がない。だったら にとっても、前聖下であるグレゴリオ30世の弟なのであるから、彼とも仲良くやっていきたい。 カプチーノを飲み終え、小型電脳情報機の電源を切ると、その場に立ち上がり、カフェを出て行く。 空は青く、太陽は輝きを増し、思わず目を顰めそうになるぐらいだった。 『今回の任務が終わったら、3人でフラメンコを見に行きましょう。本当、すごくきれいなんだから。感動するわよ』 ノエルとの約束を思い出したは、早速チケットショップを探しに、大通りを歩き始めた。 近くにチケットショップがあるのを発見し、は中に入り、近々行われる舞台を調べ始めた。 いくつかのパンフレットを手にとって、店員に話し掛けようとした、その時だった。 パンフレットをとりあえず元に戻すと、は店を出て、人々が向かっている方へ足を進めた。 嫌な予感がする。 このムカつきを治すには、この騒動の真相を探るしかない。 走りながらも、は腕時計式リストバンドのリングの中心を「3」に合わせ、横にあるスイッチを入れる。 『わが主よ、聞こえているか?』 「ええ、スクルー。この騒動は何?」 『只今、ドメネック製薬本社ビルが、共振崩壊誘導システムの低周波により崩壊され、その周りのビルや教会なども、 「ドメネック製薬って……、…………まさか…………!!」 の目が大きく見開け、真実を知ったかのように、さらにスピードを上げて走り出した。 もし、もし思っていることが当たっていたら。 人集りが出来ているところをかき分けて、彼女は最前列まで進む。 そして……、一気に青ざめていった。
1歩前に出て、他のビルの瓦礫に目を移す。 歩いてみていくと、ちょうど目線より下にある瓦礫の山の途中に、緑に光るものを発見した。 この形、見たことがある。
「あら、何かしら。……素敵なイヤリングじゃない!」 「でしょ? この前、カルタゴへ任務に行った時、目について買ったの。ノエルに似合いそうだと思って」 「そうだったのね。ありがと、ちゃん。つけてみていいかしら」 「もちろん。……思った以上によく似合ってる!」 「そう?」 「うん。本当、よかった」 「私も、何か気分が変わっていい感じよ。ありがと、ちゃん。大事に使うわね」
片方しかないイヤリングを握り締め、その場にしゃがみ込む。 「こんなの、こんなの嘘、よね……?」
「人間」なんて、信じていなかった。 の叫ぶ声だけが、その場に静かに、響き渡っていた。 |
崩れるバルセロナの中、どうやって彼女が留まっていられたかは突っ込まないで下さい(汗)。
この辺のことは無視して下さい。
このシーン、私は好きです。
人間を決して信じないが、大切な者を失うことで受ける衝撃が大きい場面だと思うので。
「仲間」というのを、肌で感じているんだと思います。
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