「ひどいですね……」
「全くです。……一体、誰がこんな真似を?」 「分からないけど、短生種にやられたとは考えられないし」 「それが理由だったら、嫌ですよ」 「言えてる」 「……うん? どなたですか?」 カウンターの置くに、アベルは声をかけた。 そこには人影が立っていて、おぼつかない足取りで、こちらに向かって歩いてくる。 「うっ! 何てなもの持っているのよ、こいつは!!」 月の光がそいつを照らした時、は思わずそう叫び、アベルの喉からくぐもった悲鳴が漏れた。 「わ、わわわっ!」
は右側の銃を短機関銃装備から強装弾装備に切り替え、吸血鬼に撃ち込もうとした。 しかし引き金を引く前に、巨体は砕けたような轟音とともに床に叩きつけられていた。 ……弾痕が穿たれた天井から、硬い足音が聞こえてきて、 「ファ、神父トレス、あなたでしたか……」 「肯定」 「予想はしていたけど、やっぱりね」 ジュリコM13“ディエス・レイ”の直径13ミリの銃口は、まだ青い硝炎が吐き出している。 「だとしても、ちょっとやりすぎじゃ……」 「…………」 トレスが答えようとした時、後ろで組成しかけていた吸血鬼が動き出した。 「さん!?」 「大丈夫、殺してないわ。殺したら、聞きたいことも聞けないで終わってしまうし」 は銃をしまいながら言うと、トレスがこちらに向かって歩き出し、 「ナイトロード神父、シスター・。なぜ卿らがここにいる? トリスタン号事件絡みか?」 「え、ええ。例の吸血鬼が所属していた“悪の華”とかってグループがここを根城にしてたっ 「“犠牲者”? 否、それは卿の勘違いだ。ここに転がっているのは、吸血鬼の犠牲者などではない。 「身内で殺し合ったってこと? どうして?」 「回答不能。データ不足だ。誘拐事件の被害者は全員、すでに餌になっていた……。事情聴取は不可能だ」 「なんてことを。浚われたのは身寄りのない子供ばかりって聞きましたけど……、むぶ!?」 「シッ、アベル、静かに」 何か物音が聞こえ、はアベルの口を塞ぐ。
「肯定。推定残数は12匹。……突入する」 「……! トレス、ちょっと待っ……!!」
「ト、トレス君! ストップ! 待って!」 アベルがトリガーを絞らんばかりだった同僚の腕にしがみ付くと、 「怪我は……、ないわね。アベル、この子を保護するから、ここからすぐ近くの修道院か教会に連絡して。 「分かりました」 「了解した」 が少女を立たせながら言うと、2人の神父は手分けして、それぞれの任務に取り掛かった。 「とりあえず、1人無事を確保、か……」
アベルとトレスは、知る由もなかった。 |
「Witch Hunt」です。
前回、非常に大まかにカットしすぎたので、今回は場面が切り替わるところでカットすることにしました。
これで多少は読みやすくなった……はず(汗)。
ちなみにここから、夢主の台詞をかなり変えました。
表現だけですけどね。
昔に読んだ方も、また読んでみると違う感じがするかもしれません。
(ブラウザバック推奨)