「そうですか。それでは、こちらもそろそろ準備を開始しましょう。シスター・ケイト、すぐに神父トレスに突入命令をして下さい」
<畏まりました、カテリーナ様>
からの状況を聞いたカテリーナが、近くにいた立体映像の尼僧に指示を出し、目の前にある紅茶を口に運ぶ。
そして次に、目の前にいるシスター・アグネスに声に話し掛けた。
「あなたには、怖い思いをさせてしまいましたね、シスター・アグネス」
「え、あ、いえ! 私は、大丈夫です。それより、ヴァトー神父の方が心配で」
「彼なら、他の派遣執行官が救い出します。心配しないで。シスター・、ヴァトー神父の繋がれていると思われる鎖の鍵は、
彼の近くに置いたんですね?」
「ええ。シスター・アグネスが牢獄から出たあと、プログラム『ヴォルファイ』によって転送させました。
今頃、無事に脱出して、ブリュージュ伯と接触するのではないかと思われます」
「なら、結構。あとは、こちらが動いてからでも大丈夫ですね」
「はい。今、ハヴェル神父の命で、例のリストの居場所を測定中です。見つかり次第、彼に伝える予定でいます」
「分かりました。では、飛行船が到着し次第、あなたにもすぐ屋敷に侵入してもらいます。いいですね?」
「了解しました、スフォルツァ猊下」
カテリーナに報告しながらも、電脳情報機(クロスケイグス)を動かすの手は止まることを知らず、
ひっきりなしに動き続けていた。
画面に表示されているのは、ヴァトー家の内装図。
探しているのは、犯罪結社と深い関係にある評議員が載っているリストである。
いくつかの部屋にある引出し、箪笥、本棚などの内蔵を1つ1つチェックしていく。
普通の電脳調律師(プログラマー)が出来ないことを、はいとも簡単にやってしまう。
プログラムに「愛されている」彼女だから出来ることである。
数分後、ギィの執務室に到着すると、ある1つの像にマークがついた。
玉座に腰をおろした7つの角と7つの目を供えた子羊のような生き物の像には、声で反応するセンサーが設置されており、
音声からの暗証管理されているものだということをひと目で理解する。
そしてその断面図を開いてみると……。
「……あった。これだわ!」
はすぐにイヤーカフスを弾くと、探し物をしている相手にすぐ交信をし始めた。
「“ノーフェイス”、聞こえますか?」
『聞こえますよ、。見つかりましたか?』
「ええ、バッチリよ。場所は、ブリュージュ伯の執務室にある怪物像の中。どうやら、音声で暗証管理されているみたいだから、
関係者が来ないと開けられないみたいね」
『分かりました。とりあえず、私はそこで待機しています。ウィリアムがきっと、事を運んでくれるでしょう。
あなたのご協力、感謝します、』
「礼には及ばないわよ、ヴァーツラフ。あなたも、くれぐれも気をつけて」
『ええ、もちろん。何かあったら、すぐに連絡します』
「お願いね。――以上、交信終了(アウト)」
は再びイヤーカフスを弾くと、1つ大きく伸びをして、目の前にある紅茶を一口飲んだ。
これで、すべて準備万端だ。トレスの飛行艇も、もうじき屋敷に到着する。
それに乗船して、一気に進んでいけば、あとは向こうの出方を待つだけだ。
「あともうひと踏ん張り……、やるしかないわね」
は電脳情報機の電源を消すと、紅茶を一気に飲み乾し、その場に立ち上がった。
最終決戦は、すぐ目の前まで来ている。
あとは、神に祈るのみ……。
引き続き、バックアップ役に徹する。
今度は、ヴァーツラフのお探し物のお手伝いです。
で、ユーグの牢屋にある鍵の謎を解くため、「ヴォルファイ」にがんばってもらいました。
今回は、「彼」が大活躍な回ですね。
どこでも使われていますから、フフッ(笑)。
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