屋敷から出たは、ここに向かう時に使った自動二輪車(モーターサイクル)に乗り込み、すぐにユーグの後を追った。

 彼の傷は、思った以上にたくさんある上、体力もすでに限界を通り越している。
 ギィを無事に助けたところで、その後の回復がどこまで出来るか分からないし、下手したら死に陥ってしまうかもしれない。
 そうなる前に止めるのが、の次の任務だった。

 猛スピードで走る中、目の前に、警官達に囲まれた神父2人を発見する。
 1人は小柄な体をした男、もう1人は傷だらけで、小柄な男に支えられている男だ。

(……もしかして、例の『元』同盟警視総監の連中か!?)

 はすぐに銃を構え、いつでも戦闘に望めるような体制を整えた。
 ――しかし、次の光景を見た瞬間、すぐに銃を収め、少しスピードを落として走り出した。

 上空に、大きな空中船艦が見える。
 それは、まぎれもなく“アイアンメイデン”だ。
 どうやら、カテリーナの到着が間に合ったらしい。

 現場まで着くと、すぐにはバイクを降り、すぐにユーグの元へ向かう。
 先ほどより、さらに出血が増えている部分を見ると痛々しい気もする。


「ユーグ! あなた、大丈夫なの!?」
、か……? 俺、は……」
「黙っていることを推奨する、“ソードダンサー”」


 ユーグが何か言おうとしたが、トレスにすぐ阻止される。
 その様子を見て、カテリーナが振り返り、ユーグに話し掛けた。


「さて、神父ユーグ、私はあなたに言わなくてはならないことがあります」
「ミ、ミラノ公、俺は……、俺は、その――」
「……任務、ご苦労でした、神父ユーグ」


 カテリーナの言葉が、ユーグの心に響き渡った。
 今、何といったのだろうか?


「あなたが私の命じた陽動作戦を忠実かつ正確に遂行してくれたお陰で、
“四伯爵”および彼らと癒着していた同盟評議会を炙り出すことができました。……敵を撹乱してのけたあなたの働きがなければ、
こうも鮮やかにはいきませんでした。ご苦労様」


 この時、はあることに気がついた。
 もしかしたら、彼女はが動く前から、このような計画を立てていたのではないか、と。
 だとしたら、彼女にまた一本取られた形になる。


「あなたの行動は任務を逸脱したものでしたが、まあ、ここにいるシスター・アグネスの命を救ったという功績と相殺しましょう。
アントワープとブリュッセルの件についても同様です」
「ミ、ミラノ公、俺は……、俺はここに……、ここに……」
「……どうしました、神父ユーグ?」


 お礼を言わなくてはいけない。
 ここにいる全ての者に、全員に言わなくてはいけないことがある。
 なのに、言葉が続かない。
 そんなユーグを見た瞬間、は彼の危機にすぐ気づいた。


「ヤバイ! このままじゃ、ユーグが!!」
「シスター・ケイト、すぐに降りて来てちょうだい! すぐ、ヴァトー神父を病院に移送して!」
「し、神父様!? 神父様、しっかり!」
「ヴァトー神父に応急処置を行う。シスター・アグネス、卿は支援を。まず、この止血点を圧迫して止血しろ。
シスター・、卿の『力』で、出来る限り止血しろ」
「了解。お願い、ユーグ、行かないで!」


 トレスの指示通り、アグネスは止血点を圧迫し、は他の出血個所に向けて両手を翳し、掌に集まる白いオーラを浴びさせる。
 傷口が徐々になくなってはきているが、出血によって起こった貧血状態を治すのには時間がかかる上、体力的にもダメージを食らう。
 これが「彼」だったら、話は別なのだが。

 数分後、上空にいた“アイアンメイデン”がギリギリまで上陸し、すぐにユーグは病院に運ばれた。
 その間も、はずっと、ユーグの手を離すことはなかった。








無事にユーグ、保護されました。
本当、ご苦労様でした。

ここで、病院の位置を考えましたが、とりあえずローマにしました。
その方が、お見舞いとか行きやすいですしね(それかよ)。

と、いうことで、次からローマに飛びます。
ちょっとユーグ夢風で(笑)。



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