「全く、トランディスも素直じゃないんだから」 「それが、彼のいいところなんですよ」 誰もいないテラスで、クレアとアベルはフェイスに寄りかかり、 店の中にいる2つの影を見つめていた。 カテリーナのもとへケーキを届けるというのを口実に、気を利かせて2人きりにさせたのだった。 「クレアさんも寝起きはよくないですけど、トランディスさんも負けず劣らずですね」 「あら、近頃はいいはずだけど?」 「たまーに悪いじゃないですか。この前なんて、私、何もしてないのに平手で頬を叩かれたんですよ? あれ、本当に痛かったんですから」 「あれは、悪いと思ってるわよ」 夢の中で何かに追われていたようで、 起こしに来たアベルに思わず平手打ちをしてしまったことをまだ根に持っているらしく、 思い出したかのように頬をさする姿に、クレアは苦笑してしまう。 そう考えると、別の意味で寝起きが悪いといえるのかもしれない。 「それにしても、いい夕日ね」 「ええ。もうすぐ秋ですか〜。モンブランが美味しい季節になりますね〜」 「それしか頭にないのか、この大食漢がー!!」 「グゲッ!!」 頭上から襲い掛かった衝撃に、アベルの頭が勢いよく落下する。 毎度のこととはいえ、クレアのどっ突きは見事なものである。 「全く、もう少しは風情を楽しみなさい、風情を!」 「はい、すみません……」 とは言え、そろそろ秋の新メニューを考えなくてはならない。 毎年恒例のモンブランはいいとして、 それ以外にも秋の味覚を堪能できるようなランチとディナーメニューを構想を練る必要がある。 「アベル、今度のお休みに朝市にでも行きましょうか。ランチも外で取りたいし」 「もちろん、おつき合いしますよ〜。……おや、アストさん、お帰りのようですよ」 店の中で、玄関へ向かうアストの姿が見える。 それに気づいて、クレアはテーブルに載せてあった紅茶を一気に飲み干した。 「どうせなら、2人で一緒に帰らせましょうか。行くわよ、アベル」 「ああ、はいはい。……って、どこに行くんですか、クレアさん? 店に入るのであれば、ここから……」 「正面から突っ込む馬鹿がどこにいるー!!」 「ウガーッ!!」 アベルの激痛を訴える声が、夕焼けに染まる空に響き渡ったのだった。 |
はい、無事に第2話が終わりました。
そして、ようやく幸里さんの男主さんであるトランディス登場です。
ようやく書けてよかった……!!
トランディスとアストの組み合わせは大好きです。
アストがですね、かわいいんですよ、フフッ(笑)。
そしてトランディス、やっぱりカッコいいです。
てか、私にもカプチーノをご馳走しろ(違)。
さて、次回はキリエちゃんメインになる予定です。
お楽しみに!
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