楽しいフライト、のはずだった。
 ある人物が、現れなければ。



『わが主よ。汝は現在、休暇中の身。我のアクセスは認めない』
「そうしようと思ったんだけど、しちゃったのよねぇ〜」

 満月がさせるこの日、教皇庁国務聖省特務分室派遣執行官“フローリスト”、は、
 長い出張から戻り、報告書を提出して、短いが休暇を頂いていた。
 が、しかし、彼女の習慣(趣味?)である情報収集だけは止めることが出来ず、
 電脳情報機(クロスケイグス)を使い、中庭のテーブル席で、ミルクティを共に没頭していた。
 それを、彼女を幼少の頃から管理していた、情報プログラム「スクラクト」が音声だけを送り、少々呆れたように言った。

「アクセスはしないけど、せめて、こう、最新ニュースとか……」
『現在では、最新情報は“アイアンメイデン”からでも入出可能だ』
「ケイトまで使って、情報収集したくないわよ」
『だったら、やめることだ、わが主よ』
「スクル〜、お願いだから分かって……」
『そのまま止めないと、強制的に終了する』
「……分かったわよ、もう。相変わらず、頑固者ね、スクルーは」
『汝が我らの言葉を聞かんからだ。我はこれより切断する。汝もすぐ、部屋に戻って休むことだ。プログラム〔スクラクト〕、完全終了……、クリア』

 プログラム「スクラクト」が回線を切断すると、は呆れたような顔をして、電源を切ろうとしていた。
 が、それを止めるように、後ろから人の足音……、いや、機械音の重々しい足音が響いて来た。

「あれ、トレス? これからお出かけ?」
「ミラノ公から、緊急命令が下った。これから出動する。卿はそこで何をしている、シスター・
「私はゆっくり、満月を見ながらティータイムよ」
「否定。卿の前にあるのは、クロスケイグス。よって卿が今、プログラム『スクラクト』とアクセスしようとしていたと推察される」
「でも、今、止められたわ。『休暇中は休め』だって。プログラムの癖に、生意気なのよ、こいつは。で、緊急命令って何?」
「卿は今、休暇中の身。俺の仕事に肝油することは認めない」

 機械は、どいつもこいつもこんなものなのか。
 同じ派遣執行官、“ガンスリンガー”のHC−]V(ハーケー・トレス・イクスを見ながら、
 ふとの頭にそれが横切ったのだが、あえて言葉には出さなかった。

「俺はすぐに、“アイアンメイデン”と合流する。卿は大人しく、部屋で休むことを推奨する」
「分かったわよ、トレス。いってらっしゃい♪」

 は笑顔でトレスを見送ると、トレスはそのままスタスタと上司のところへ向かっていった。
 それを見送ると、はフフフッ笑い、再びクロスケイグスを起動し、トレスが受けた緊急命令を調べ始めた。
 いつもだったら、プログラム「スクラクト」を使うのだが、またいろいろ文句を言われると思い、
 少々面倒だが、一般プログラムからの検索を試みることにしたのだった。

 そう言えば今頃、アベルはロンディニウムからの仕事を終え、豪華飛行船トリスタン号に乗って、ローマに帰還途中だ。
 そのことにふと気づき、その情報を収集してみることにした。
 緊急事態ともなると、その近辺で何かあったとしか考えられない。……本心としては、外して欲しいのだが。
 現在のトリスタン号の位置は、ちょうどロンディニウムとローマの中間点を飛行中だった。
 衛星回線を使って、飛行中のトリスタン号を映し出す。
 しかし、どことなくだがふらついて見える。一体、どうしたのだろうか……。


「……仕方ない、やってみますか」






はい、ついに始まりましたね、「FLIGHT NIGHT」。
とりあえず、プログラマーな夢主さんの紹介ページに近いストーリーにしたいと思っています。
ごうご期待♪








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