ブルノ市内にあるブルノ空港は、山の平地地帯に建てられており、その滑走路などが、全て木で生い茂っていた。
 10年前に使用を中止してから、プログラム管理のみで、人の手が一切加えられていないからだ。

 離陸する30分前から、は電脳情報機で、ブルノ空港内のプログラムを複写(コピー)し、
 相変わらずなスピードで書換え(リライト)していた。
 先ほどまで甲板にいたトレスはすでに戻っていて、いつでも着陸出来るように、しっかりとシートベルトを締めて座っている。
 アベルも先ほどのソファで準備万端だ。


「あと、どれぐらいの時間がかかる、シスター・?」
「もうじき終わるわ。……よし、これでバッチリよ」


 打ち込んだプログラムの最終確認をすると、はリターンキーを押して、ブルノ空港に転送させた。
 すると数秒後、電脳情報機には「着陸許可」の文字が表示され、思わず安堵のため息を漏らした。


「レオン、許可が下りたわ。すぐに着陸態勢に入って」
「おう」


 すぐに操縦者(パイロット)に伝えると、“タクティクス”がゆっくりと減速し、地上に降りていく。
 はシートベルトをしっかり締めると、軽く首を回して、体を解した。
 さすがに長時間のプログラム打ち込みは体中の筋肉を使うため、それを少しでも解さなくては任務に差し支えてしまうからだ。

 町並みがはっきりと見え始め、機体がゆっくりと滑走路に向かう。
 そして前輪が無事に滑走路に触れると、一気にスピードが落ち、後輪の衝撃で機体が少しリバウンドした。

 レオンがブレーキをかけて揺れを止めると、“タクティクス”を木が一番生い茂っているところに停止させた。
 上空からの敵に発見されないための、1つの方法だ。


「うし、無事着陸成功だ。がんばったな、“タクティクス”」


 操縦席のエンジンを切って、お礼を言うように叩くレオンを見て、
 相当彼のお気に召したことを喜ぶように、が彼に微笑んだ。
 刑期が下りなくても、彼にこの機体を任せてもいいのかもしれないとも思ったが、
 それでは今後、もし彼が不祥事を起こした時に釣る「餌」がなくなると考え、その言葉を排除した。


「さて、早速偵察しに行きましょう。作戦は予定通り明日決行。もし失敗しても、アルフォンソの戴冠式までには終わらせるわよ」
「了解した」


 がシートベルトを外しながら、他の派遣執行官達に伝えると、その場から立ち上がり、“タクティクス”の搭乗口を開けた。

 太陽の光が一斉に入り、一瞬目を顰めてしまう。
 しかしそれが徐々に慣れていくと、目の前にある木々が、乗船者達の気を和らげるように出迎えた。


 それは勝利に満ちた笑顔で、船内に戻りたい。
 知らない間に、彼らはそう、心の中で思っていたのだった。








短いですが、無事にブルノ到着です。

それより、本当にお気に召したようです、レオンさん。
これにファナちゃんを乗せて、空が飛べたらなぁとか思っているのかも。
でも、娘想いなレオンなら、その夢も叶えたい想いが強いのではないでしょうか?

さて、次回から本編に戻ります。
が、前半のはまたもやバックアップです。
それはやはり、今回の司令塔だからというのがあるからなんですけどね。






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