そんな中、別の画面から大きな水しぶきが聞こえ、それに反応するように、
 はすぐに、レオンがいる作業場の映像を移している第2映像を見た。

 この場所には、危険な液体燃料の漏出に備えて深いプールが備えられており、中にはすでに水が溜まっていた。
 そこに、レオンのものと思われる僧衣が浮いていたのだ。
 だとしたら、さっきの水しぶきは敵を騙すためのものだったのだろうか?

 そう思った時、プログラム「セフィリア」が向きを変え、プールのちょうど横辺りを映し出した。
 そこには異端審問官の格好をした、小さくて丸い人物(?)と、半裸で立っている大男が映し出されたのだ。

 その半裸な男の体を見て、の顔が赤くなっていくのが分かった。
 それもそのはず、その格好をしているのは彼女の同僚だからだ。


「レオンの馬鹿!! 何て格好しているのよ!!?」
<それは俺じゃなく、このダルマウナギに言え!!!>


 顔を隠しながらも怒鳴るに、レオンもそれに退行するかのように怒鳴りつける。
 彼だって、好きでこんな格好になったわけではないのだが、これは女性に見せるようなものではないことも事実だ。
 その場にがいたら、レオンの腹部に彼女の怒りの鉄拳が入ったに違いない。

 この映像を消すことが可能なら即行消したいのだが、任務を成功させるのには仕方がない。
 とりあえず、目で隠しながら、彼の映像を見ることにしたのだった。

(うえ〜ん、早く終わって〜!)

 心の中で泣きながらも、早く画像が変わってくれることを願いながら見つめる。
 本当にこんなの、早く終わって欲しい。


<こうなったのも、すべてお前のせいだ、ダルマウナギ。返事次第じゃ、おめえ、死ぬぞ?>
<すんませんっ! 許して下さい! 自分、超チョーシこいとりましたですっ!>
「本当よ! 本気で殺すわよ!!」


 相手には聞こえていないのだが、も思わず反撃してしまう。
 それぐらい、ダメージが大きかった、ということだ。

 相手は土下座して謝っているようだが、レオンもも、思わず睨みつきながら、相手の顔を見つめている。
 本当、その場にいたら、本気で相手を殴りたい気分だ。


<消えな。――二度と、その醜い顔(ツラ)を見せるんじゃねえ>
<はっ! ありがとうございます!!>


 レオンはとりあえず相手を許すと、目の前にある噴進爆弾に向かって歩き出した。
 これで、ようやく解体作業が実行できると安心していた時……。

 後ろで気絶した修練女が、後退したフィリポによって投げ出されてしまったのだった。


<て、てめえ、何しやがる!>
「すぐに彼女を救出して! 早く!」
<分かってらあ!>


 レオンはの指示に答えると、慌ててプールに飛び込んだ。
 すると、それを待っていたかのように、フィリポが彼に目掛けて縄?を一直線に飛来したのだった。
 しかしそれを裏拳で弾くと、修道女を床に上げた。


<ちょーしこきやがって、このダルマウナギ! やっぱ、てめえは殺す!>
<殺すだあっ?>


 フィリポが勝ち誇った表情でワイヤーを握ったままなのを見て、はあることを思い出した。

 先ほど、プログラム「スクラクト」が彼の説明をしている時、
 「電撃攻撃を仕掛けてくる可能性もある」と言っていた。
 そしてその電撃は水を振動して、他人に害を与えることが出来る。
 と、言うことは……。


「フェリー! すぐに“ダンディライオン”に、半抵抗バリアを!!」
『承知しました、わが主よ。プログラムコード:0537、ファイル:0357。半抵抗バリア作動、“ダンディライオン”に転送』


 がプログラム「フェリス」に伝えたのと同時に、
 プールに落ちていたワイヤーから凄まじい電流がレオンの全身を襲ったのだった。


「もしかして彼は……、強化人間(チューンド)!?」
『その通りだ、わが主よ。ブラザー・フィリポは最大30万Vの高電圧放電が可能な強化人間だ』


 プログラム「スクラクト」がに答えるように言うと、彼女は彼の周りにバリアを貼ったのは正解だと思った。

 相手がなら、完全にバリアを貼ることが可能なのだが、他人にはそういうわけにもいかない。
 そのため、彼女以外にも対応可能な半抵抗バリアを発動させ、彼の心拍数を停止さえないようにさせた。
 多少の痙攣は仕方ないにしろ、何もしていなかったら、今頃彼は即死状態だった。


<おお、まだ生きてやがる。まさにゴキブリ並みの生命力! すんばらすぃ〜!>
「……だんだん、この言葉使いがムカついて来たのは私だけ?」
『落ち着け、わが主よ。汝がそれでは、周りに迷惑をかける』


 宥めるかのようにプログラム「スクラクト」だったが、
 実際、彼女のムカつきがすぐに押さえられるのもではないことは十分承知していた。
 しかしそれでも、思わず口にして言ってしまうのは、やはり主人想いだからであろうか。

 「彼」がそんなことを思っているとはつゆ知らず、はフィリポをイライラしたように見つめていると、
 彼が傍らのコンソールから見える電気器具の間にあったボタンを押し込み、
 プールの栓をしていた鎖が引っ張られ、緊急用の排水口に水が吸い込まれていったのだった。


「まさか、このまま排水口に流すつもりじゃ……!」
<ひゃ、ひゃべえ……>
「え〜い、こうなったら、レオン、相手も道連れにしなさいっ!」
<ひわれらるれも、ひょうひゅりゃあ(言われなくても、そうすりゃあ)!>


 電流を浴びたことによって、口がうまく回らないが、何とか相手の言うことは理解出来る。
 あのバリアも、ここまではさすがに防げなかったらしい。

 レオンはに言った通り、相手を道連れにするかのように、痙攣した手で先ほどフィリポが投じたワイヤーピックを握った。
 相手は手首にしっかりと鋼線を撒きつけてあるから、このまま引っ張れば彼も一緒に水の中に沈む。


<な、何だあ、これは!?>
<へ、れめえもみちるれら、このらるまうらり(へ、てめえも道連れだ、このダルマウナギ)>
<こッ、このクタバリ損な……イィィィィッ!>


 フィリポの叫び声と共に、2人の体が排水口に吸い込まれ、その姿はじきに見えなくなっていった。
 その後を、プログラム「セフィリア」が追いかけるように進むのを見て、
 は場所が転じるまで、「彼女」に任せるとして、アベルとトレス、ヴァーツラフがいる地下広間へと目線を戻した。



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<……異端審問局に、天才的な暗殺者がいると聞いたことがあります>


 肩に刺さっている峨嵋針(リングニードル)を引き抜きながら、ハヴェルは相手に語りかける。その相手とは……。


「……来たわね、パウラ……」



 そう、の宿敵、シスター・パウラの姿があったのだった。









最初、本編を真剣に読んでなかった私は、
レオンが全裸だと思って、思いっきり焦りました(爆)。
上半身でも焦るのに、全裸じゃもっと焦ります。
とりあえず、叫んでいますけどね(笑)。

シリアスな中でも、少しだけギャグっぽい要素を入れたので、気が少し楽になりました。
フィリポ、結構使えるかも。ギャグ担当で(笑)。
でも今後、あまり登場がありません、残念ながら(爆)。
ごめんね、フィリポ。でも楽しかったわ♪




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