「あら、グラディス、お急ぎのようね」




 たくさんの資料を持って走り回るグラディスを見て、

 は思わず首をかしげた。




「あ、シスター・。実は――、お館様に、どうしても目を通してもらいたい資料があるんです。

でも、どこにもいなくて……」




 周りに誰もいない時は、

無理してここで使用している名前で呼ばなくてもいいと伝えたのはなのだが、

それを思い出したかのように言うグラディスが可愛いと思ってしまう。




「また、どこかで情報収集でもしているんじゃなくて?」

「だと思って、先ほどまで哨戒に出ていたイクス神父にも聞いたのですが、姿を見なかったみたいで」

「ふむ、となると、検討がつかないわね……」




 グラディスの捜し人が、普段から街に出ては、情報収集に励んでいることは、

 Axの中では有名な話である。

 だが、そうじゃないとなると、一体彼はどこにいるのだろうか。




「その資料、いつまでに提出すればいいの?」

「今日の夕方までです」

「夕方まで? 今、まだ昼前よ?」

「ええ。でも、こういうのは早く片つけてしまった方がいいと思って」




 大した士民だ、と、は思わずそう感じた。

 エステルといい、グラディスといい、

 近頃の十代の女性は見た目以上にしっかりしていることに感心する反面、

 不安そうな顔を見せる少女に、は安心させるように笑顔を見せる。




「グラディス、早く片つけることはいいことだけど、焦ってやっても仕方ないから、ここはゆっくり、

彼が姿を見せるまで待ちましょう」

「でも……」

「大丈夫だって、心配することないわよ。ね!」




 励ますかのように見せたの笑顔が、

 なぜかグラディスの心を落ち着かせていく。

 事実、初めて会った時から、この笑顔に何度も励まされ、

 何度も不安な気持ちを取り除いてくれた。

 そして今も、こうして安心させてくれる。




「……分かりました。それじゃ、これはミサが終わった後に、お館様に目を通してもらうようにします」

「それでよし。……あ、よかったら、一緒に昼食どう? アベルとエステルも一緒だし」

「え? でも、いいんですか?」

「こういうのは、遠慮しちゃ駄目よ。2人とも、きっと喜ぶわ」

「そう、ですか? それじゃ……、ご一緒させて下さい」

「勿論! 歓迎するわよ、グラディス!」






 が見せる笑顔が、グラディスを幸せな気持ちにさせていく。

 それを不思議に思いながらも、彼女はこの感覚が消えないでいて欲しいと、

 心の底から願っていたのだった。



















幸里さんのオリジナルで、男主の士民でもあるグラディスと共演してみました。

グラディス、とても可愛いです。
純粋な女の子はいいです。
そして、主に忠実なところがまた愛らしいです。
また共演してみたいです〜。





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