<神父トレスから報告が入っております―――“ソードダンサー”の拘束に失敗したと>
窓の側に立っていたカテリーナに、ケイトはブリュッセルから先ほど入ったトレスの報告を伝えていた。
<トレスさんは、引き続き追跡続行の許可を求めてらっしゃいますけど……、いかがいたしましょう、カテリーナ様?>
先ほど、バルセロナで休暇中のが、アベルの代わりに送った報告書から目を上げず、カテリーナはケイトに言った。
「追跡は一時中断させて、神父トレスをただちにローマに帰還させなさい。今は“ソードダンサー”の処遇に割いている時間はありません。
……バロセロナで重大な問題が起こりました」
<バロセロナで? まさか、アベルさん達に何かありまして?>
「昨夜、バロセロナ全市が壊滅しました。……その被害にシスター・ノエルが巻き込まれ、死亡したそうです」
<な、何ですって!?>
ケイトは絶句して、心の中で疑問を投げかけた。
“全市が壊滅”とは何だ!? 一体、ノエルの身に何があったのか!? アベルと、休暇中のは!?
「とりあえず今、シスター・が代わりに調査を続行して、神父アベルをこちらに戻しているところだそうです。
シスター・ケイト、貴方はすぐ彼女からバルセロナの状況を確認して。私は今から枢機卿会議に報告してきます。
……そう、“ジプシークイーン”が確か、セビリアにいたはずね? 彼女を現地に至急向かわせ、シスター・と交代し、
彼女をローマに戻しなさい。彼女には、ローマで別の任務があります」
<別の、任務?>
「そうです。そのために、早急にこちらへ戻るように、“ジプシークイーン”から伝えるように言ってください。
それと、“ダンディライオン”を檻から出す手続きを」
<あ、あの、カテリーナ様! それで、ユーグさんについてはいかがしましょう? トレスさんを呼び戻すんでしたら、別に誰か、職員を――>
「その必要はありません」
ケイトの質問に、カテリーナは静かに首を振り、穏やかに、しかし決黙と告げた。
「ユーグ・ド・ヴァトーの僧籍を本日付で剥奪します。彼は――切り捨てます」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カサブランカの花束を置き、十字に切って祈りを捧げる。
そんな日々を、は毎日続けていた。
一昨日、低派数兵器“沈黙の声(サイレンと・ノイズ)”によって、彼女は大切な人を失った。
今でも遺体の回収が進められているが、彼女が最後に発見した“切り札”が見つかっていない。
早く見つけて、ローマの襲撃を食い止めなくては……。
「お姉様、発見〜!」
祈りを捧げ終えた時、後ろから聞き覚えのある声がして、後ろに振り返る。
そこには1人の白い尼僧服を来た少女が、満弁の笑みでこっちにやって来た。
「……カーヤ! どうして、あなたがここに!?」
「カテリーナ様に言われて来たの! お姉様、また休みなしで働いているから、代わって来なさいって」
“ジプシークイーン”、カーヤ・ショーカは嬉しそうに言うが、はちっとも嬉しくなかった。
こんな時だからこそ、動かなくてはいけないのに。
こんな時だからこそ、休んでなんていちゃいけないのに。
の中で、いくつものことが頭を横切った。
「あ、でもね、カテリーナ様が、アルフォンソ大司教様のローマ帰還の準備もしなきゃいけないから、戻って来てって言ってたよ」
「アルフォンソ大司教様の? ……なるほど、そういうことね」
まだ少し引っかかることはあるが、今は少しでもローマにいる者を助けなくてはならない。
ただでさえ、トレスとユーグがブリュッセルに行ってしまっている。
ローマにいるのは、帰還したであろうアベルとレオンだけだ。
これでは人手が足らなくて、またここと同じようになってしまう。
「……分かった。ローマに戻るように、ケイトを経由して伝えておくわ」
「は〜い。でも、カーヤ、淋しいな。せっかくお姉様に会えたのに」
「私もよ、カーヤ。でも、きっとまた会えるわ」
「うん! 私、それまでに、たーくさん吸血鬼を殺して、お姉様に神様へお願いしてもらえるようにがんばる!」
“フローリスト”という名を持つは、カーヤにとって、自分のことを神に伝えてもらう「手段」だと思っているらしく、
彼女に対してはカテリーナ並みの待遇をする。
もちろん、にはそんな力はないし、神と仲がいいわけでもない。
もし仮にそうだとしたら、こんなことになる前に止めていた。
(私には、誰かの死を止めるような力なんてない)
心の中で呟くと、再び花束に目を落とす。
カサブランカ。彼女によく似た花だ。
次第に彼女の顔が浮かんでいき、ゆっくりと消えていく。
(私はまた、約束を果たせなかった……)
瞳の中にある涙が、一瞬光ったように見えた。
「SILENT NOISE〜GUN’S N’ SWORDS」です。
予定通り、完璧オリジナルストーリーで進行中です(爆)。
そして、「OVERCOUNT」のケイトの発言により、先取りでカーヤ登場。
一応尼僧服にしましたが、いつもの黒のワンピースのよかったのでしょうか?
「トリブラISSUE」のシスター姿を見て、思わずこの服にしてしまったのですが……。
しばらくの間、ストーリー上、シリアスな話が続きます。
まぁ、途中ギャグも入れますが(笑)。
おもしろいところは、やっぱりないといけませんですしね。
楽しみはちゃんと、作っとかないと♪ フッフッフッフッフッ(笑)。
(ブラウザバック推奨)