「やっぱりそうでしたか」 「やっぱりって・・・どういう意味よ。まるで結末が分かってたみたいな口ぶりじゃない」
そう不審気に言われ、カップから口を離したアベルが小さく微笑み、 に視線を合わす。
「―――私も同じようなことがあったんですよ。
どうしても、 さんの前であの力を使わなきゃならなくなって・・・、その時
さんが私を見て訊くんですよ。『痛くない?』って」
逆立つ髪に、血を彷彿させる眼。 更には人にあるまじき背の翼。
ソレを見て、彼女が口にしたのは心配を含んだ小さな疑問。
「こっちが驚いちゃったですよ。今までみたいに、もっと・・・酷いこと想像してたわけですし」
そして彼女はアベルの羽を物珍しげに見詰めたかと思えば、徐に触れてきたという。
「流石に『怖いでしょう』とか『不気味じゃないですか』って言ったら、凄く不思議そうな顔で首を傾げながら言うんですよ」
―――だってアベルだもん
「あはははっ。 らしい。ふふ」
「もぅ、逆に力が抜けるくらい驚愕したんですけどね、私は。あの後私凄く困惑してあわてちゃって・・・
さん笑いすぎですっ!」 「だって簡単に想像出来・・・あははははは」
慌てまくってアタフタしていたであろうアベルを簡単に思い描くことが出来きたらしく隣で腹を抱えるように笑い続ける
に、アベルは不満そうに抗議するが、どうやら無駄らしい。
が、直ぐに平静を取り戻した はその唇に微かな笑みを浮かべたまま、アベルの方へと向き直る。
「Imago animi sermo
est・・・」 「・・・言葉は心の似姿である・・・ですか?」
「 は気付いてないんだろうけどね」 「ですねぇ」
どんなに姿が変化しようと、大した意味などないのだと、言葉少ない彼女の心はそう語る。
2人の変化を目の当たりにしても、 が見ていたのはどこまでいってもアベルと
でしかなかった。
「天使・・・か。もし私達がそうなら―――私達を『天使』にしてくれるのは、
なのかもね」 「そうですね。何てったって、『天使の輪』は月の下で見えたみたいですし」
くすくすと額を寄せ合うように2人は微笑んだ。
言葉はヒトを形作る。
その言葉一つで、ヒトは翼を持つのかもしれない
。
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