そして気がついた時には、キリエはベッドに横になっていた。
思わず目を掠めてしまう。
キリエもリエルも、恐る恐る下へ下りていった。 自分達を庇ったことで、クレアの立場が悪くなったのではないかと不安になったからだ。
しかしそれでも、クレアのことが心配で仕方なかった。
彼は遠く離れた位置で、このやり取りを見ていたのだ。
しかし最終的には、キリエの意見を尊重することで納得してくれた。 もし何かあれば、すぐに飛んで行くという、心強い言葉ももらった。
キリエが眠ったのを確かめると、すぐに宿舎へ戻るためだ。
クローゼットにある服を適当に出して着替えながら、 皇帝区に着ていく服は、もっとしっかりしたものを調達しないといけないと思う。 大通りに出れば、ブティックとかも結構あるはずだ。
パンと野菜、ハムと卵を取り出し、手際よく朝食を作る。 今日は店が開くまで予定がないので、外で昼食を取るのもいいかもしれない。 少し多目に材料を出し、サンドイッチを作っていくと、 バスケットの中に丁寧に入れた。
「ううん。今日は部屋でゆっくりしてる。変に緊張しちゃって」
まだ体が本調子ではないらしい。 「それじゃ、何か作って置いておく?」 「作る気力はあるから大丈夫だよ。ありがとう。あ、もし覚えていたら、ミマールさんのところでチョコチップ買ってきて」 「分かった。あまり無理しないでよ」 「うん」
そしてバスケットを持って、裏口から出て行ったのだった。
そんなことを思いながら、クレアは煙草の白煙を目で追いかけた。
その夕日をバックに、クレアは少し緊張したキリエと共に、話に花を咲かせていた。
それはイスターシュとウェステルの間に生まれた子だからとか、 ヴァーツラフの姪だからとか、ここの住民だからとか、そんな簡単な理由ではなく。
昨日の騒動で、何となく宿舎にいずらかったからだ。 水筒に温かなコーヒーを入れて、適当に作ったサンドイッチを持って、 1人、のんびりと空に浮かぶ雲を見つめていた。
それが何か、合図でも送っているようで、 クレアは視線を前方へ戻した。
クレアの存在に驚いたかのように目を見開いた、金髪の少女の姿だった。
いつもならすぐに駆け寄るのに、どこか遠慮しているようにも見える。
そんな心配もしながら、クレアはキリエを自分の隣へ招いた。 キリエも少し躊躇いながらも、クレアの横に座ると、 クレアは水筒に入っているコーヒーをキリエに奨めた。
「い、いえ、大丈夫です。……ありがとうございます」
少し苦いが、とても温かく、落ち着く味だ。
どちらが話し掛けるわけでもなく、沈黙が続いていた。
クレアがそう思った時、ふとキリエが持っているバスケットに目が行った。
「ああ、これ、昼食用のサンドイッチを持ってきたんです。天気がいいから、ここで食べようかなって」 「そう……。……なら、邪魔しちゃいけないわね」 「い、いえ! そんなことないです!! むしろ、その……、……いて欲しい、です」
キリエは必死になって首を横に振る。 そんな姿が可愛らしいと思いながらも、昨日のことを考えると無理しているのではないかと感じ、 思わず苦笑してしまう。
鼓動が少しだけ早くなる。 手が汗ばんでしまいそうだ。
そんなクレアに、キリエは不安になりながら、自分の意見を述べた。
だが、それは当たり前のこと。 クレアにとってキリエは、大事な住民の1人で、大事な存在の1人なのだから、 当然の行動である。
「クレア、さん……?」 「確かに、あなたを危険な目に合わせるのには抵抗があるけど、住民の意思を尊重するのも私も役目。
まるで「天使」のように優しかった。
「……はい! ありがとうございます!! 約束します!!」
その笑顔を見て、クレアは思わず安堵のため息をついた。
「え?」 「いいえ、こちらの話。――何だか、お腹空いちゃった。キリエ、よかったら私のサンドイッチも食べて。 「いえ、そんなことないです! それじゃ、私のも食べて下さい! こちらこそ、お口に合うか分かりませんが」 「キリエの作るものは、どれも美味しいから好きよ。ありがとう」
いつもと変わらない笑顔が溢れ出す。 そして楽しいランチタイムが始まったのだった。
2人に背を向けたのだった。 |
相棒デスクトップにある画像ファイルが開かなくて、
ビルダーの素材達も開かなかったらどうしようかと思ったので、
臨時で更新と相成りました。
どうやら無事に開いたみたいで、ちょっと安心です。
ぎこちない感じを書くのが、密かいに得意だったりします。
なので、今回は結構書きやすかったです。
そして私も、キリエちゃんの手作りサンドイッチが食べたい(笑)。
クレアのは……、くれるの、お姐さん(え)。
それにしてもトランディス……、
影でコソコソ探るのが好きな人だな(笑)。
(ブラウザバック推奨)